このネパール旅行から約一年後、私は再びネパールに来た。あの楽しさが忘れられなかったのだ。せっかくの二度目なんだから別の場所に行っても良かったんだけど、懲りもせずまたポカラに来てしまった。

　んでね、せっかくポカラに来たんだから、もう一度シャランコットに登ったのだ。モチロン例の女の子の写真を持ってきたぞ！頂上の土産物屋さんにいた、やたらめったら生き生きした女の子だ。写真渡したら喜ぶだろうなー。

　正直言うと、私は彼女に再会するコトを楽しみにしていた。そのためにもう一度ポカラに来たっていっても過言じゃないぞ。

　相変わらずの「ガイドさせてよー」少年少女の群れをかき分けかき分け頂上まで登った。さぁ、女の子に会いに行こっと。家はちゃんと覚えてるもんねー。

「ナマステー。ナマステー。お〜い、誰かいないかーー」

　あ、いた！例の女の子だ！あ、あれ？ちょっと違うぞ。なんか、微妙に別人？

「あ、あの、ナマステ。あ、いや、私別にお土産買いに来たんじゃなくて、あの」

　そうだ、写真見せれば分かってくれるかな？んで写真見せると「オー！マイシスター」とか言っている。そうかー、例の女の子の姉さんなんだ。どうりでよく似てるはずだよ。

　あ！やって来た！例の女の子！・・・じゃないぞ。なんと、もう一人お姉さんがいたのだ。すごいね、美人三姉妹だよ。二人とも写真見てすごく喜んでくれている。

「ねーねー、妹さんはドコにいるの？」

「ああ、あのね、妹は死んじゃったの」

　・・・は？

「妹はね、８ヶ月前、病院で死んだのよ」

「えーと、あの、え？ほ、ホント？」

　ウソでしょ、だって、あんなに元気だったじゃない。ほんの一年前だよ。な、なんで？

　そのあと、私はどーしたんだろう。なんか、あんまりよく覚えていない。

　死んじゃったの？あの子、死んじゃったの？なんで？なんで？あんなに生き生きしてたのに。病気だったの？

　あの子のお姉さんが、「彼女は８ヶ月前に死にました」ってゆうのが妙に耳に残ってる。「去年死にました」じゃなくて『８ヶ月前』なんだ。まだ、『去年』なんて大雑把なくくり方はできないんだ。あのお姉さん達は笑っていたけど、まだ、過去のことにはなってないんだろう。

　しかし、８ヶ月前っていえば、私と会ってから４ヶ月ぐらいしかたってないじゃないか！なんで死んだんだ！？

「来年じゃ遅いよ、明日がいい」

　あ、あの子、たしかそう言ってたよな。「来年じゃ遅い」って。私はその時、あれ、なんか変だなって感じたのを覚えている。

　私は色んな国で写真を撮って、それを渡したり送ったりしたんだけど、渡すのが来年になるよ、って言っても、みんな笑って「ＯＫ、ＯＫ」とか承知してくれた。だけど、あの子だけは、「来年じゃ遅い」って言ったんだ。そのとき妙にひっかかったコトを覚えている。

　ひょっとして、あの子は、自分が死ぬことを知ってたんだろうか？

　お姉さんの話しでは病気で死んだようなことを言っていた。あの子は、知っていたのか？たぶん、知っていたんだろう。

　知っていたのに、あんなに生き生きとしてたのか？

　去年あの子を見たとき、私はすごく影響されたのだ。そのハツラツとした、元気イッパイで、どんな小さなコトでも実に生き生きと楽しそうに振舞うその姿に。

　自分が死ぬと分かっていたのにあんな風にできたのだろうか？知っていたからこそだったのだろうか？

　なんか、私は途方にくれてしまった。お姉さん達があの子の写真を喜んで受け取ってくれたことだけが救いだった。

　え〜っとぉ、なんか、暗い話しになって申し訳ないです。本当はね、この話しは書くつもりじゃなかったんです。でもね、なんとゆうか、半分自分のために書いたようなもんなんです。彼女のことを忘れないように。

　この件があってから、私はもっとハツラツと生きようと思ったのだ。彼女に笑われないように。せっかく長生きさせてもらっているんだから、彼女以上に生き生きと暮らさなきゃあバチがあたる。と思ったのだ。

　でもね、数年が過ぎていくうちに、彼女のことを忘れていたのだ。しかも最近の私ときたら、生き生きどころか、それはもう自堕落に怠慢にダラダラと無為な時間を浪費しているだけだったのだ。

　そんな中、ちょっと自分のホームページを読み返していたのだ（そんなにヒマなのか？）。そして、彼女のことを思い出したのだ。

　うわーうわーうわー！！わ、私ゃ何やってんだ！！こ、こんなコトじゃダメじゃないかっ！彼女に顔向けできないぞ！

　なんかものすごく恥ずかしかったんだよー。ちょ、ちょっと生活態度を改めなきゃ！と思ったんだよー。

　だ、だからね、このことを忘れないようにちゃんと書いとくコトにしたんだ。だからこれは私の覚え書きみたいなもんなんです。

　申し訳ないです、こんなもの読ませてしまって。でもね、彼女のことをほかの人にも知ってもらいたいってのも少しあったんです。だから、そーゆー女の子がいたんだなーってことを、よかったら覚えておいていて下さい。

おわり