インドネシア スラヴェシ島のウジュンパンダン（空港がある）と、コーヒーで有名なトラジャとの、だいたい真ん中あたりにある小さな町。インドネシア長期滞在者いわく、『インドネシアで最も心優しいひとびとが住む町』パレパレ。
そのパレパレに、ほとんどタナボタで二週間ほどの出張が決まった。
インドネシアの首都ジャカルタから国内線の飛行機に乗り換え、スラヴェシ島のウジュンパンダン空港に到着。ここからパレパレまでは契約していたドライバーに乗せていってもらう。車にはベンツのマークがあったが、どう見たってベンツには見えない。ホテルから仕事先までの毎日の足も、このドライバーが連れてってくれるらしい。
さっそく出発。パレパレまでは４〜５時間かかるというが、ドライバーのオヤジがとばすとばす。前の車を追い抜こうとするのはいいが、抜ききれずに対向車線を全速力でえんえん突っ走ってる。隣の車もスピード落としてくれりゃあいいものを、遅いくせに引こうとしない。そのうち対向車がやって来た。どの車も絶対引かない。みんなでクラクションを鳴らしあってる。
「お前ら、引くっちゅう事を知らんのかぁ！」
あわやぶつかるっ！て、寸前でどうにか避けてるが、どうやって避けてんだか全然わからない。こんな事が何回もあった。なんでこんなんで事故がおきないんだ。助手席に座った私は、このカーチェイス（そんなかっこいいもんじゃないが）と、初めて見るインドネシアの景色でパレパレまでの４〜５時間あきる事はなかった。途中で寝ちゃったけど。
たどり着いたパレパレの町はそれまで通りすぎた町や村に比べればいくぶん大きな町だった。海に面して町が開けていて、商店街やマーケットなどがある。大きさはともかくウジュンパンダンの町よりもこぎれいな感じがする。町の方から山に入っていくと、もうそこは町というよりも村といった方が近い。うっそうとした森がたくさんあって、私の好みだ。
我々の泊まるホテルはその山の上にあり、海を見下ろす感じで建っている。ブーキットインダーという名前で、海に沈む夕日を眺めながら食事ができるいいところだ。
でも、我々が仕事から帰ってくる頃にゃあ、あたりは真っ暗。そこから夕日を見たことは一度も無かった。
仕事熱心で責任感の強い（？）私が、唯一自由にすごせるのは朝の散歩だけなのだ。
いつもは朝寝坊のくせに、ここでは６時頃に自然と目が覚めてしまう。もともと散歩好きの人間がこんな所に来て早起きして、じっとしていられるわけがない。さっそく散歩に出かけていった。ホテルの前のそこそこ大きい通りを、とりあえず右の方に歩いていく。
バス停（だと思う）の前でたむろしている子供たちがいる。
遠めにこちらを見てニコニコソワソワしている。
さっそく覚えたてのインドネシア語を使ってみた。
「スラマッパギ〜」（おはよう）
ワァ〜！てな感じで「パギ〜」と返してくれた。嬉しくなって写真をカシャリ。こっちの子は実に嬉しそうに写真に撮られてくれる。日本でこんな事したら「なんだよーオッサン」となって悲しくなるところだ。
写真が趣味で、特に人物スナップが好きな私は、こんなに素直に喜んでくれて、嬉しくって仕方がない。こんなに幸せな気分で写真が撮れたのは始めてだ。
さて、このバス停少年、散歩の帰りにもう一度通ると人数が増えてるじゃないか。みんなでよってたかって何かを期待しているのがひしひし伝わってくる。
よっしゃぁ！期待にこたえてやろうじゃないか。ウエストバックからカメラを取り出すと
「やったぁ〜」って感じで飛び上がった喜んでくれた。
「うんもぉ〜！そんなに喜んでくれるとおぢさん張り切っちゃうよ〜」
いつのまにか近所のおじさんも入ってきて一緒にカシャリ。撮られる方も嬉しいかもしれないけど、撮ってる方もすごく嬉しい。
こっちで写した写真は写ってる人を探してプレゼントしたが、この子らは結局見つからなかった。とっても残念だ。
道端で洗濯していたオバチャン達。その周りを子供たちが、ウロチョロウロチョロしている。
あやしいインドネシア語で話しかけるが、クスクスニコニコするだけでなかなか会話にならない。
カメラを取り出すと、それまでうろちょろしていた子供が寄ってきた。家族が集合したところで一枚カシャリ。
鉄砲かついだアンちゃん。（最初は棒切れをかついでいると思った）どっか猟にでも行くのだろうか？
子供たちや女の人は私を見てにこにこ笑ってくれるが、男の人は違う。“なんだこのやろっ！”的な目を投げかけてくる（メンチ切る状態だ）。非常に怖い。でも、いつまでも怖がっててもしょうがないので、私の中の最高の笑顔で（どんな笑顔だ）挨拶してみた。
「スラマッパギ〜」
と、今までメンチ切ってた人が、思いっ切り顔をくずして「パギ〜」と返してくれるじゃないか！なあんだ向こうも緊張してたんだ。しかめっ面から笑顔までの落差があまりにも大きいので思わず笑ってしまった。
よっしゃぁ！楽しい時間がすごせそうだ。
