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 アワサで私が泊まった宿は、ガイドブックとかでもほめていた宿だ。宿代はモヤレの宿の倍ぐらいしたが、実に環境のいい宿だった。なんとかパークホテルってゆう湖のすぐ隣にあるホテルだ。かなり広い湖で夕日なんか眺めてるといいのだ。朝起きたときも湖で散歩ができる。

 この朝の散歩は気持ちいいぞ。やたらめったら鳥がイッパイいるのだ。そんな鳥の鳴き声に包まれて散歩が出来るのだ。それと、アフリカでは珍しいのだが、朝散歩してるとジョギングしてる人にイッパイ出くわす。さすがアベベを生んだエチオピアだね。マラソンが盛んだわ。

 んで、朝の散歩が終わったら宿の庭で朝メシを食うのだ。これがまた気持ちいい。宿の庭が花だらけでここにも鳥がイッパイいるんだ。花だらけの庭で鳥の鳴き声に包まれながら、おいしいコーヒー飲んでの朝御飯。いっや〜ゴクラク気分だね。

 しかしだ、そんなゴクラク気分でコーヒー飲んでるときに変なヤツが断りもなしにオレの隣に座るのだ。この宿に出入りしているスカタンガイドだ。

 そいつはさぁ、ホントうっとおしくてしつこいんだ。ぱっと見は二枚目風のやさ男なんだけど、そいつが猫なで声を出して言い寄ってくるのだ。「私は別に商売で近づいてるんじゃない、ただ君に親切にしたいだけなんだ」とかお決まりのセリフ言いながら決して離れようとしない。私がコーヒーカップ持ってほかの席に移動しても「ついて来るな!」って怒鳴っても営業スマイル浮かべながら離れない。ちょっと気持ち悪いぞ。

 まったく!こいつが出てきたらせっかくのいい気分やおいしいコーヒーやキレイな花や鳥の声が台無しになってしまう。あーーうっとおしい!!

 うっとおしがっててもしかたない、気分を替えて散歩しよう。

 このアワサって町、けっこうデカイ町なのだ。今泊まってる宿は町の外れにあるんだけど、町中に行くとけっこう栄えていて宿も相当イッパイあった。多分何百軒かあるんじゃないか?しかもそこは全部飲み屋だ!

 今の宿は環境はいいのだが、純粋なホテルなのでちゃんとしたバーはない。食堂も無いので(簡単な朝メシだけは出来るが)メシ食うときは町に出なくちゃいけない。私は思った。夜になったら町に繰り出して飲み屋めぐりをしよう!(ワクワク)

 とゆうことで、あっとゆう間に夜になりました。

 さっそく夜の町へ繰り出した。まあ店があるある。みんなネオンギンギラギンで目移りしちゃうよ。とりあえず一番ハデそうな店に入ってまずは生ビールだ。モヤレの店と違ってここの店はかなりデカイ。お客さんもイッパイ入ってるし女の子もイッパイだ。遠目にも美人が多そうだぞ。

 店の店長が(多分店長)やって来て頼みもしないのに(期待はしてたんじゃないのか?)女の子を一人連れてきた。いやなかなかの美人ですよ。ただ、美人は美人なんだけど、ちょっと、なんとゆうか、あからさまに夜の女性の化粧をしてる。妖艶な雰囲気プンプンなのだ。しかも愛想が微塵も無い。なんかかってにビンビール頼んで飲んでるし。ところでそのビンビール、誰が金払うのだ?まさかオレ?だって、この姉ちゃん「ビール飲んでもいい?」とか一回も聞かなかったけど。

 私が生ビール追加したら、お姉ちゃんもビンビールを追加しようとした。まだ最初のビンビール飲み干してないのに。

「ちょっと待ってちょっと待って、そのビール、誰が金払うの?」

「you」

 ひと言かい!それに待ったれや、ビール飲んでもいいなんかオレひと言もゆうてないぞ。オレがビール頼むの断ったら、お姉ちゃん冷たい目をして睨みつけるんだ。

 なんじゃその目は?それが客に対する態度か?それになんで客が安い生ビール飲んでるのに女の子が断りもせんで高いビンビール頼むんや。日本のスナックでさえ女の子は甘い声出して「飲み物頼んでいいですかぁー」とか聞くんだぞ。それをなんだお前は。

 さっきの店長がやって来て「まーまーまー」って感じでいきなりベッドの値段交渉をし出した。ちょっとちょっとちょっと、なんでいきなりそーなるのさ。

 私が断ると女の子はすんげぇキツイ目をして捨てゼリフ吐いてどっかへ行ってしまった。なんなんだこの店は。

 モヤレの店は、確かにカワイイ子は少なかったけど、みんなみーんな愛敬はタップリだった。しかしこの店の女の子、確かに美人は多いけど愛敬は皆無だ。なんとゆうか、夜の蝶の妖艶な雰囲気をおもいっきり放出している。まるで「あたいは娼婦だかんね!あたいに話しかけるっちゅうコトは、あたいを抱くっちゅうことだかんね!そこんとこ分かって声かけてんだろうねっ!」とでも言ってるみたいだ。

 なんか、飲む気がうせてしまうよ。ほかの店にも行ってみたんだけど、どこも同じようなもんだった。なんだかなー、もう帰るか。

 ちょっとだけ消沈して夜の町を歩いて帰ってたら、エチオピアの若者数人に声をかけられた。

「すいません、日本人ですか?どうですか、今から僕達と飲みに行きませんか?」

 ありゃ、誘われちゃったよ。しかしなぁ、知らない人について行くのはよくないからなぁ。

「ごめんね、もうホテルに帰るトコなんだ。私は飲まずに帰るよ」

「ファックユー!!」

 な、なんじゃぁ?いきなり何言っとるんじゃ。すごい優しそうな声出してたのに、いきなりなに言うんじゃ。

「待たんかいおら、おのれらなんちゅうこと言うんじゃ」

 なんかいきなりだったのでおもわず日本語で言ってしまった。そしたら連中、全力疾走で逃げるんだ。口々に「ファックユー」と叫びながら。

 な、なんなんやあいつら?いったい何者だ?そーいえばモヤレでもおんなじようなコトがあったな。やっぱり夜は出歩かない方がいいんだろうか。

 それ以来私はあまり夜に出歩かなくなった。宿が町から離れてるので、どうしても帰りが危なくなってしまう。・・・町中の宿に替わるかな?

 さて、そーゆーこともあったが相変わらず同じ宿に泊まってたある日、ちょっと遠くまで足を伸ばして散歩していた。そしたらなんとインターネットカフェを見つけたのだ。首都以外でもインターネットカフェがあったんだ。

 エチオピアを旅行した人は、「エチオピアには首都にしかインターネットカフェは無い」って言っていた。だけど、例のスカタンガイドがこの町にもあるようなことを言っていたのだ。「案内しよう」とか言っていたが、だれがお前の世話になんかなるか!と思ってたのだ。でも、自分で見つけたんだからちょっとネットしていこう。

 私は旅行中ホットメールを利用してるのだが、ホットメールは1ヶ月アクセスしないとデーターが全部消されてしまう。なのでネット屋さんを見つけたら、こまめにアクセスすることにしてるのだ。

 んで店に入ったら、ネット屋のお姉ちゃん、メッチャクチャ美人!!!いやーー美人の多いエチオピアでもベストスリーには入るぞってゆうぐらいの超美人だ!これは何だかんだ言って仲よしにならなくてわ!

「あらごめんなさい。今日は回線の調子が悪くてつながらないのよ」

 あぁん、そんな。それじゃあ長くここにいれないじゃないか。

「でも、あなたあてのメッセージをあずかってるわ」

 は?私あてのメッセージ?あずかってる?どーゆーことだ?

「ちょっと待ってね。今取って来るから」

 何を言っているのだ?このお姉ちゃんは。

 そして、しばらくして戻ってきたお姉ちゃんは、手に一枚の紙を持っていた。「はい、どうぞ」と私に渡してくれたのだ。そして、それは、確かに私あてのメッセージだった。そして、差出人は、あのスカタンガイドだった!

 メッセージには、よくこの場所が分かったねとか僕が協力すればもっと簡単に分かったのにとかエチオピアは広いから僕の協力が絶対必要だとかなんとか書いてあった。

 バカッタレがーーーーっ!!

 なんじゃこの男は!オレがここに来ることを予想してこんなもん置いときゃがったんだ!あ゛ーーーーうっとおしいやっちゃ!!なんかここまできたらストーカーみたいヤンケ!ホンマにもう、私ゃそのメモをクシャクシャにしてしまったよ。

 なんかおもいっきりむかついてそこを出た。せっかくの美人姉ちゃんも台無しになっちゃったよ。ムカムカムカムカ。

 ホントにムカムカってたので、そのまま宿に帰らなくてアッチコッチ寄り道わき道遠回りして帰った。しかし、逆にそれがよかったんだろうな、偶然通りかかった宿屋でコーヒーセレモニーをしてるとこに出くわしたのだ。

 コーヒーセレモニー。これはエチオピアでも見たかったものの一つだった。

 エチオピアはコーヒーがおいしいので有名なのだが(実際メッチャおいしい!)、お店で出すコーヒー以外に、各家庭で自分達で飲むコーヒーをていねいに入れる。それをコーヒーセレモニーと言ってるんだ。その入れ方は、ホントに儀式めいていた。

 ガイドブックなんかでは、このコーヒーセレモニーを見に行かないか?と誘われ、エライ金をふんだくられる、とゆう詐欺が頻発してると書いてあった(特に首都で)。なので、こんな所で明らかに詐欺ではない自分達用のコーヒーセレモニーに出くわすとは思ってもみなかったのだ。モチロン見学させてもらいました。向こうも「おいでおいで」とか言ってるみたいだった。

 さて、そのコーヒーセレモニーですが、まず最初の準備からして儀式みたいだった。

コーヒーセレモニーの写真 お香をたいて煙だらけ

 最初は床に細長い草を敷きつめるのだ。そして、おもむろにお香をたく。スゴイ煙の量だ。そして準備が終わると、炭火を焚いてその上でコーヒー豆を煎るのだ(なんと豆を煎るところから始める!)。ていねいに煎ってるよ、ここまででかなりの時間を要した。いったいどのぐらい時間がかかるんだろう?

 そして豆が煎り終わると小さな臼を出してきて、その中に豆を入れて細い棒でトントン叩いて豆を潰すんだ。本当にていねいだ。潰した豆を急須みたいなのに入れて(この急須みたいなのが年期が入って真っ黒でカッコイイ)いよいよ飲むときが来た!


 いくつもの小さなコップに煎りたて潰したてのおいしそうなコーヒーを入れていく。残念ながらコップの中には最初っから砂糖が入っていた。せっかくだからブラックで飲みたかったのだが(私ゃブラックコーヒーの方が好きなのだ)、贅沢は言ってられない。さっそく飲ましてもらった。

 ・・・うまい!!メッチャクチャうまい!!!私、こんなうまいコーヒーを飲んだのは初めてだ!ホントうまい!!店で飲むコーヒーは少し濃い目のコーヒーなのだが、このコーヒーは濃さがちょうど良くてまっことうまい!!

 一緒に飲んでた人達が「うまいか?うまいか?」って聞くんだけど、もう、うますぎますよ!

「コンジョーノ!!(おいしいの意味。ちなみに、キレイも同じくコンジョーノ=何回も言いました)ベリーベリー コンジョーノ!アマサケナロ!(ありがとう)」

 いやみんな喜んでくれてる。いやいや私が一番うれしいよ。当然ながらお代わりさせてもらった。あ、せっかくだから今度はブラックにしてもらおう。

 んで、ブラックで飲ませてもらったのだが、意外だったのだが、確かにブラックもすごくおいしいのだが、砂糖を入れたやつの方がもっとうまかった。実はほかの町でも何回もコーヒーセレモニーにお呼ばれしたのだが、ブラックも試してみたが、やっぱり砂糖を入れた方が断然うまかった。う〜ん、エチオピアのコーヒーは砂糖を入れた方が合うのだろうか?後半からは、全て砂糖入りで飲ませてもらった。


 その後も何杯か飲ませてもらって、おまけにビスケットまでいただいてしまった。こんなにまでしてもらったんだから、私は少しぐらいのお金は払うつもりだった。しかし、ここの人達、まぁったくお金を取ろうとしないのだ(ちなみに、その後色んな町で何回もお呼ばれされたコーヒーセレモニーだったが、お金を要求されたことは一度も無かった)。

 いやでもなあ、こんなに親切にされてんだからなぁ、なんかしたいよなぁ・・・。そうだ!宿をここに替わろう!

 うん、ちょうどいい。どーせ今のホテルに帰ってあのスカタンガイドが待ってるだけだ、それならここに替わった方がよっぽどいいや。

 とゆうことで翌朝ここに引っ越してきた。前のホテルは町から遠かったけど、ここなら町にも近いし夜飲み歩くにも都合がいいぞ(こりずに飲み歩く気か?)。

 なんかねぇ、この宿も良かったのだ。町の大通りからは外れてる宿なんだけど、この宿のまわりがなんか下町っぽくて路地が多くて散歩が面白いぞ。

 そしてそんなある日、宿のお姉ちゃんが変なことを言ってきた。

「お友達からメッセージをあずかってるわよ」

 え!?お、お友達ぃ?メッセージィ?ま、まさか!?

 そう、そのまさかだった!あのスカタンガイドからメッセージが届いたのだ!

 なんでやねん!なんでオレがここにおること分かったんや?!だってこの町、尋常じゃないぐらい宿の数が多いんだぞ。ホントに何百軒もあるんだぞ。しかもここは大通りから離れたかなり奥まった場所にあるんだ。なんでこんなトコを見つけられたんだ?!マジで寒気がしてきた。これじゃぁまるっきりストーカーじゃないか。

 そしてその翌朝、ストーカーガイドがこの宿にやって来た!まるで古い友人でもあるかのような笑顔を見せてやって来た。が、そんなものに騙されるもんか!

「ワレ何でこの場所が分かったんや!どーやって調べた!!」

「ちょっとちょっと、そんなに怒鳴らないで。僕は君の役に立ちたくて来たんだから・・」

「誰がそんなコト聞いとるんや!どーやってこの場所調べたか聞いてるんや!ちゃんと答えんかい!!」

 私は部屋を飛び出してガイドに掴みかかろうとした。もし胸ぐら掴んでたらケリの何発かは入れてたかもしれない。しかしやつは全力疾走で逃げてしまった。いつかのファックユー若造と同じだ。くっそー、ロクでもないエチオピア人は逃げ足だけは早い。

 私は、もうこの町を移動することにした。なんかどこに行こうがストーカーガイドに付きまとわれそうな気がする。まったく!あのバカさえいなけれれば居心地のいい町だったのに!



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