スプリングボックを出たのが夜だったので、国境に着いたのはもう夜中だった。暗くて景色が見えないしバスも快適なので、国境を越えるってゆう雰囲気は希薄だった。でもまあ、国境越えは国境越えだ。パスポート持ってイミグレーションへ行こう。
ナミビアへの入国はいたって簡単で、ビザ代も無料で三ヶ月滞在できる。このへんは南アと同じだな。バスの乗客が一列に並んで順番に入国手続きするんだけど、なんか区役所の手続きみたいだね。夜中で眠くてボーっとしてたから、入出国してんだかなんだかよく覚えていない。
ま、それにしてもとにかく、
国をまたがって旅行する時いつも気を使うのが現地通貨だ。次の国へ行って使えもしない前の国のお金を持っていても役にたたないものね。
陸路で国境越えをする時はたいがいの国境で次の国の現地通貨と両替えできるので（闇両替でレートはそんなに良くないけどね）、わざと小額残しておいて両替えする。そーするとたとえ小額でも最初にその国のお金を持っているからなにかと役立つんだ。国境近くの町ではちゃんとした両替所や銀行がない場合が多いからね。
だけど、残したお金が多すぎるとレートの悪さで損をするし、逆に少なすぎるとお金が足らなくなって困ってしまうことがある。この辺の調整にいつも気を使うのだ。
ところが、ナミビアでは南アフリカの通貨が何の問題もなく使える。使い切るとか少し残すとか考える必要が全くなかった。
ナミビア国内では南アの通貨とナミビアの通貨（ナミビアドル）は完全に等価なのだ。お店とか宿とかで南アランドで払っても何の問題もない。でも逆に、ナミビアドルは南アでは使えない。南アの通貨、ランドはアフリカ南部ではけっこう強いのだ。ナミビア以外でもレソトとかスワジランドとかで問題なく使える。ジンバブエとか他の国で両替する場合でも南アのランドはレートがいいのだ。さすがアフリカきっての先進国だね。
さて、入国手続きも終わってバスに戻ったら、そのままガーガー寝てしまった。だって眠かったんだもの。首都のウイントフックに着いたのはお昼ぐらいだったけど、ずっと寝てたのでどんな景色だったか分かんなかったよ。
そして到着したウイントフック。ナミビアの首都だ。ここも都会だねー。なんかマダガスカル以外のアフリカの首都はみんな都会だよ。町だけ見てたらアフリカに来てるのか欧米に来てるのかよく分かんないや。
バス停の前には何組か宿の客引きの人達が来ていた。全員白人だ。そーいえば、南アフリカで泊まった宿のオーナーは全員白人だった。ナミビアで泊まった宿のオーナーも全員白人だった。黒人の人はなかなかそーゆー仕事につけないのだろうか？私にはよく分からなかった。
さて、そんな客引きの中から一番安い宿を選んで連れてってもらった。カルボナーラボックスとかゆう宿だった。ん？違うかな？とりあえず何とかボックスって名前だ。
この宿、なんか典型的なバックパッカー御用達な宿だ。癖のありそうな欧米人旅行者がワンサカといる。建物の中にバーがあって音楽もガンガン流れている。ビリヤード台もあるし、なんと庭にはプールまであるのだ（今は寒くて泳げないけど）。なんか宿中がファンキーな雰囲気だね。
実は私、こーゆー雰囲気って苦手だったりする。イマイチ自分に合わないのだ。
でも、この宿には便利なとこがあった。宿の壁やら通路にイッパイ情報が張り付けられているのだ。各旅行会社のパンフレットからツアーメンバーの募集からなんやらかんやらと。この宿の中だけでけっこう情報が集められる（他の宿も同じような感じだったが）。
私はこのナミビアで二つの目標があった。一つは、『ブッシュマンに会いたい！』。もう一つは、『ナミブ砂漠に行きたい！』だ。
まずブッシュマンだけど、昔アフリカのブッシュに住む少数民族をあつかった『ブッシュマン』って映画があったんだ。映画自体はそんなに面白くなかったんだけど、主人公のニカウさん（役者じゃなくて本物のブッシュマン）って人が有名になってニカウさんのアフリカでの生活を紹介する番組がイッパイ作られた。
その文明を受け入れていない自然と一体の生活を見て、子供心に（もう子供じゃなかったかな）へ〜こーゆー世界もあるんだー。とか思っていた。で、そのブッシュマンがいる国がナミビアだった。
こ、これは会いに行かねば。まさか本物のブッシュマンに会える機会がおとずれるとは思ってもいなかった。
そして、壁に張ってある情報を探したのだが、ブッシュマンに関する情報だけは全然無かった。
しかたなしに町にある旅行会社をいくつかまわったのだが、ブッシュマンに会いに行こうツアーはどこもやってなかった。ブッシュマンとは全然違う他の少数民族を訪ねるツアーはあったのだが、ブッシュマンはダメなのだ。旅行会社の人に理由を説明してもらった。
ブッシュマン達は、自分達の文化をしっかり守って生活しているのだ。その生活を見せ物にしてお金を得る。なんてことはしてないし、そんな必要もないのだそうだ。ひょっとしたら、わけの分からん旅行者がやってきて自分達の生活が乱されるのを嫌がっているのかもしれない。
なので、どこの旅行会社もブッシュマンツアーの企画をしていないそうなのだ。どーしても行きたいならば個人でレンタカーを借りて訪ねるしか方法はない。だけど、もし自力で行けたとしても、現地でトラブルにならないという保証はない。
そーなのかー。私は免許が無いので行けないよなー。それに、もし行けたとしても、旅行者のエゴで普通に生活している人達の所へ行ってその生活を乱す権利はないものなー。
残念だけど、ブッシュマンに会いに行くのはあきらめることにした。きっとそれで正解なんだろうな。
だけど、もう一つの方はあきらめないぞ。
もう一つ、そうナミブ砂漠だ！ナミブ砂漠には絶対に行くんだ！しかもこのツアーはナミビア観光の目玉なので、どこの旅行会社だって企画している。今泊まってる宿でだってツアーを募集しているのだ。
そのナミブ砂漠だが、実は、最初はそれほど気合いを入れて見に行くつもりではなかった。
ナミビアにはデッカイ砂漠があって、ナミビアを代表する有名な観光地らしい。そんじゃまあ、とりあえず見に行くか。てなぐらいの気持ちだった。
ところが、アフリカの旅行中に知り合った人達の中でナミビアに行った人は、すべて、全員、例外無しにナミブ砂漠を絶賛していたのだ。
その中には砂漠フリークの旅行者もいたんだが、世界中の砂漠を求めて旅している人だった。そしてそんな世界中の砂漠を見ているはずの人が、「ナミブ砂漠は別格だ！色んな国で砂漠を見たけど、ナミブ砂漠が飛び抜けて一番いい！！」と言っていたのだ。
こ、これは見に行かねば！とりあえず見に行こう。ではなく、絶対に見に行くぞ！に変わったのだ。
そんなわけでブッシュマンツアーをあきらめた後、ナミブ砂漠ツアーの方を調べだした。せっかく絶賛されているナミブ砂漠なので、砂漠に何日間か滞在できるツアーにしよう。
ところが、色々探したんだけど、砂漠に何日も滞在できるツアーは無かったのだ。どのツアーも同じような内容で、各地の色んな見どころをまわるツアーばっかりで、ナミブ砂漠はその中の一つ。どれもこれも砂漠には一泊しかしないのだ。ナミブ砂漠のみってツアーはどこにも無かった。
砂漠だけじゃ人が集まらないのか？他の見どころはいらないから砂漠だけにしたいよ。宿のおっちゃんに相談したのだが、「砂漠だけのツアーはどこもやってないだろう」とゆう話しだ。
なんだかなー。砂漠だけじゃ商売にならないのかなー。個人的には他の見どころをまわるのにお金使うぐらいなら、ほかはどこにも行かなくていいから私を砂漠だけに連れてってーって言いたいんだけどな。
ここで気合いのある旅行者ならば、宿の壁に告知の張り紙をして、砂漠だけに行きたい人を集い、そのメンバーでレンタカーを借りて砂漠を目指す！そーゆー行動を起こすもんだ！
しかし、悲しいかな私はヘナチョコ旅行者だ。そーゆー行動を起こす気概も無く、ブツブツ文句を言いながらも既製のツアーを探してる小さな私だ。
さって、気分を入れ替えて既製品のツアーを探そっと。
で、探して決めたツアーが『バックパッカーユニット』とゆう宿が企画しているツアーだ。
何でこれに決めたのか、今となってはあんまり覚えていない。多分、値段が安かったからかな。せっかくだから宿移るか。ここに泊まっててツアーだけ別の宿のやつに行くってのもへんだもんね。
とゆうことで宿を移ったのだが、いやー移ってきたこの宿なかなかいいわ。白人の家族で運営してる小じんまりした宿なのだが、前の宿と違って静かで落ち着く。ノンビリするにはこっちの方がいい宿だね。しかも、この宿の庭にもプールがあった（寒くて泳げないけどね）。そのプール脇でバーベキューとかもできるようになっている。設備なんかも申し分ないのだ。
宿の人は、優しそうなお父さんオーナーに太っちょのおかあさん。それに二人の姉弟だ。そしてこのお姉ちゃんが中学生ぐらいだと思うんだけど、カワイイのだ。この子は大人になったら美人になるだろーなー。おぢさんはこのお姉ちゃんとお話しとかできてちょっと嬉しいぞ。
それにこの宿、台所を自由に使えるのだ。これ嬉しいね。あんまり地元料理が食えないナミビアでは自炊ができるのはありがたいのだ。ま、自炊ったって卵料理とかの簡単なのばっかりだけどね。
ナミビアの地元料理って、私あんまり分からなかった。地元料理が食える食堂って、町中でもどこでも見当たらないのだ。食堂（とゆうかレストラン）は、中華とか洋食関係とかファーストフードとかどこでも食えるようなのばっかりなのだ。何で地元料理が無いのかなー。
スーパー裏手の駐車場にブッかけメシが食える出店があったのだが、地元料理といえばそれぐらいだった。安くてウマくてけっこうここで食っていた。しかし、いかんせん種類が少ないのだ。何回も食ってると飽きてしまうんだよなー。
あ、もう一つあった、ソーセージだ！
ソーセージが地元料理かどうかはむずかしい所なのだが、なんにしてもスゴクうまかった。
ナミビアはドイツの植民地だったので、ソーセージの種類が豊富なのだ。そしてみんなウマイ！！これは嬉しかったねー。道歩いててソーセージ屋さんがあると、必ずといっていいほど食っていた。そのままかぶりついてもウマイしパンに挟んでサンドイッチにしてもウマイし細いのもありゃあブッといのもありゃあ色んな味のヤツもあっておいしかった。
さて、肝心のウイントフックの町なんだが、実は、あんまり面白い町ではないのだ。町がね、なんか普通の大都会なんだ。道歩いてる人もほとんどが白人で黒人の数がなぜか少ない。なんかアフリカに来てんだか欧米に来てんだかよく分かんない感じだ。さっき書いたように食い物もどこの国でだって食えるような物がほとんどで、旅行してる感じが希薄なんだな。
ま、ごく普通の町並みでごく普通の食生活で旅の疲れをいやしなさい。とゆうことなのだろうか。たしかに、ちょっと疲れが出てきてた所もあるので、休憩には丁度いい町なのかもしれない。これから先も長いんだから、骨休めできる所で充分に休んでおこう。
