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2001年8月9日、南アフリカ入国

 入国してしまいました、南アフリカ。危険なアフリカの中でも危険指数の高い南アフリカだ。大丈夫かー、私ちょっとビビッてるぞ。なんたってマダガスカルでは安心しきって旅行していたのだ。なんか緊張感がユルユルになってしまっている。そんな状態で飛行機乗って南アまで来ちゃったよ。よしっ、ここは気持ちを切り替えてフンドシのヒモ絞めなおさなくっちゃ。

 南アフリカのビザは、空港で簡単にもらえる。しかもビザ代無料で3ヶ月間も滞在できる。3ヶ月も日数があればあんまりセカセカせずにノンビリ旅行できそうだ。

 ただ、ちなみに、物価は全面的に高い!多分アフリカで1,2を争う物価高の国だろう。特に、ムッチャクチャ物価の安いマダガスカルから来た私は、この国の物価にヒーヒー言っていた。とりあえず空港で100$分両替したのだが、この100$、いつまでもつだろうか。

 さて、まずは空港から目指す町だが、もちろんヨハネスブルクになんか行きません!だって怖いもの。とゆうことでヨハネスのちょっと先にあるプレトリアとゆう町に行くことにした。そこも安全な町ではないが、ヨハネスよりかはよっぽどマシらしい。ほんで、空港からプレトリアへ移動する方法だが、乗り合いタクシーで移動することにした。その乗り合いタクシーには2種類あるのだ。

 一つは、とりあえず目的の町まで行って適当な場所で降ろしてハイおしまい。のタクシー。もう一つは、乗客一人一人の目的地(自宅とかホテルとか)までちゃんと送ってくれるタクシー。いわゆるドアトゥードアってやつだ。モチロン私はドアトゥードアの方に乗るつもりだ。多少割高だが安全には代えられないもの。

 乗り合いタクシー乗り場へは、『自称お客さまサービス係』のアヤシイ兄ちゃんに案内してもらったのだが、マトモなタクシー乗り場に案内してくれた。変な道に入りそうだったら逃げる準備をしてたのだが、とりあえず問題なかった。

 ほんで乗り合いタクシーで空港から移動して驚いたのだが、ここ、大都会だ!ジンバブエでも驚いたけど、南アはそれにもまして大都会であった。いやあ、どこにもアフリカのイメージがない。ビルだらけだったよ。

 私が乗ったタクシーには、プレトリア方面へ行く人が3〜4人乗っていた。安宿風の所やアパートみたいな所や、みなさんの目的地までちゃんと送ってくれてるみたいだ。これなら安心だね。

 私が目指す宿はワードオブマウス。マダガスカルのイバトゥ村で会った日本人がすすめてくれた宿だ。そこではウエルカムドリンクが飲める(ビール可)らしい。そこが気に入ったな。タクシーの運ちゃんもこの宿の事を知っていて、ちゃんと入り口の前まで送り届けてくれた。

 おー、ここがその宿か。なんか、宿の塀にいかにもアメリカンポップアート的な絵が書かれている。ぱっと見は幼稚園の塀のようだが、まあ、それは良しとしよう。幼稚園と違う所は、塀の上に泥棒除けの有刺鉄線が巻いてある。う〜ん、さすが南アフリカ、やっぱりこーゆーのが必要なんだろうな。ちなみに、他の民家やアパートなど、全ての家の塀に同じような有刺鉄線が巻いてあった。中には高圧電流付きのやつまである。ここでは水と安全はタダじゃないんだ。

 そしてこの宿、なかなか居心地が良さそうだぞ。設備もキレイだしくつろげる庭もあるし、インターネットまで出来る。マダガスカルでは小汚い安宿ばっかり泊まってたので、ちょっと豪勢な気分になっちゃうね。

 それに値段だってそれほど高くない。ドミトリーで35ランド(南アの通貨)ぐらい(うる覚えだ)。1$がだいたい7ランドぐらいなので、一泊5$ぐらいだ。この宿で5$ならまだ納得できるな。マダガスカルの5$の宿に比べたら夢みたいだね。とゆうか、マダガスカルの宿が高すぎるのだ。物価と宿代のバランスがとれてない。南アフリカは全体に物価は高めだが、それを考えると宿は良心的な値段設定になっていた。

 ドミトリーにカバンを置いてさっそくウエルカムドリンクのビールをいただく。ここのビールはなかなかウマイ!しかも生ビールだ!ちょっと毎晩飲んじゃいそうだな。

 ビールを飲んだ後庭でくつろいでたのだが、ビックリした。なんとイバトゥ村の宿で会った同い年の日本人、Hさんがいたのだ!

「どーしたんですか?ヨハネスに行ったんじゃないんですか?」

「いやいや、友達にはもー会ったので、こっちきたんですよ」

 いやー、又会えるとは思わなかったよ。これも縁なんだろうなー。

 さて、一休みした後はプレトリアの町を散歩です。いやーこの町、完全にヨーロッパの住宅街だ。しかも高級住宅街。道も広いし緑も多い。黒人が歩いてなけりゃ完全にヨーロッパだよ。

 ただ、その歩いてる黒人がコワイ!!

 みなさんメッチャクチャにガタイがいいんだ。プロレスでメインイベントをはれそうなゴッツイ黒人がのっしのっし歩いてるのだ。背は高いわ胸板は厚いわ腕は太いわ、はっきり言って恐いぞ。あんなのに襲われた日にゃあ、私ぁひとたまりもない。たまにニコヤカに微笑んでくれる黒人もいるのだが、どーしてもビビって顔が引きつってしまう。

 あっ!いかん!こーゆーオドオドした態度が強盗さんを呼ぶのだ!カラ元気だ、ハッタリだ!とりあえず胸はってふてぶてしく歩こう!でもやっぱり恐いから人通りの多い道を歩こっと。

 でもね、この町、散歩しててもあんまり楽しくないのだ。確かに町自体はしゃれててキレイなんだけど、ただそれだけって感じなんだ。あんまり長居する町ではないな。

 ただ、天気だけはいい。カラっと晴れてて暖かい。洗濯物なんかあっとゆう間に乾いちゃうよ。マダガスカルの後半は天気が悪くて洗濯物があんまり乾かなかった。いつも湿ってるような服を着てたのだが、ここにきてひさびさにパリっと乾いた服が着れてうれしいね。

 だけど、ポカポカで気持ちいいとばかりは言ってられない。ここは南アフリカだ。やっぱり犯罪は発生していた。

 この宿にもう一人日本人の男性が泊まっているのだが、その人が真っ昼間に強盗の現場を目撃してしまったのだ。

 その人はお昼にパスタ屋さんでパスタを食っていた。で、食い終わって外を眺めてたら(全面ガラス張りのオシャレな店だ)一人の黒人が外のATMでお金をおろしていたのだな。そして、お金が出て来た瞬間、別の黒人が(当然プロレスラー級だ)体当たりをかましてきた!で、その人がふっ飛んでる隙に別の人がお金とカードを奪って走り去って行ったそうなのだ。あっとゆう間の出来事だった。

 真っ昼間である。当然通行人もいた。だが、あまりにも素早い犯行だったので誰にも止めることはできなかったそうだ。

 いやー恐いなー。オチオチお金も引き出せないよ。

 この国にはATMの機械がけっこうある。ビルの中にある機械には近くにガードマンとかがいるのだが、道端の機械には当然そんな人はいない。・・・お金おろすならガードマンがそばにいる場所でおろさなきゃいけないな。うん、一つかしこくなった。

 さて、ところが、その強盗を目撃した日本人だが、夜になっても帰って来ないのだ。散歩で知り合った現地の人(大学教授と言っていたらしい)の所にお呼ばれして出かけて行ったきり帰って来ないのだ。

 大丈夫だろうか?どっかに連れ去られて身ぐるみ剥がされてるんじゃないのか?私とHさんは彼が帰って来るのをずっと待ってたんだが、もうすぐ12時だ。

「大丈夫かなー。大学教授っちゅうのはやっぱりウソで強盗やないのかなあ」

「うーん、彼の話しでは上品な感じの人で強盗に化けるとは思いにくいんだよね。やっぱり、アッチの方じゃないの。もーやられちゃってるとか」

 そう、彼(Kさん)は出かける時不吉な言葉を残していたのだ。

「あの大学教授ねー、どうもホモっぽいんだよね。なんかボクはホモに好かれやすいんだよねー。あ、大丈夫。ホモのあしらい方は心得てるから。まだ一度もヤラれたこと無いし。それじゃあ、行ってきまーす」

 う〜ん、強盗に襲われてるのか、それとも別の意味で襲われてるのか、どっちにしろ襲われてるのかぁ?

 とかなんとか言ってる間にKさんが帰って来た!

「大丈夫でしたかぁ?なんか取られましたぁ?ヤラれちゃったんですかぁ?」

「いや、大丈夫。でも今回はあぶなかったよー。未然で防ぐのが大変大変」

 話しを聞くと、そのオカマは(やっぱりオカマだった!)本当に大学教授だったそうだ。しかもかなりエライ先生らしい。

「でね、色々と案内してくれるんですよ。案内してくれるのはいいんだけど、全然帰ろうとしないんですよ。何度も帰るって言ってるのに、そのたんびにまーまーとか言ってはぐらかすんですよ。しかも私を見る目が、いかにも『いいだろ?いいだろ?』ってうったえかけてるんですよ。あぶなかったなー。なんだかんだでメシまでおごってもらって家にも招待されたんですよ」

「い、家まで行ったんかい!それ、アカンがな。それは、『私はOKよっ』て言ってるようなもんでしょ。ヤラれても文句言われへんがな」

「いやいやいや、私はこれでもホモを見分ける目は肥えてるんです。力ずくでも襲うようなヤツか、あくまでも合意の上でイタすヤツか、ちゃんと分かりますから。彼は後者でしたからね。私がキゼンとした態度をとっていたら絶対にヤラれることは無いと思いましたよ」

 そ、そーゆーものなのだろうか?

「それでね、その人の家、もう大豪邸。あんな立派な家に入ったのは初めてですよ。家具は立派だわ電化製品なんか日本製がウジャウジャあって、ヤッパあの人は金持ちですね。ただ、家に入ったらアタックするする。ちょっとこまってしまいましたよ」

「そりゃ家まで来たらその気になるわなぁ。で、結局ヤラせたの?」

「ヤラせませんって!手ぇ握らせただけです」

「手は握らせたんかい!」

「だって、イッパイお世話になったからそれぐらいはいいかなって思って。でも、キスしようとしたのはチャンと拒絶しましたよ」

「な、なんかそれ、あれやんかぁ、さんざんミツがせといて結局なんにもヤラせん性悪女みたいやんか」

 う〜ん、ちょっとだけその大学教授に同情するぞ。

「でもちゃんとメール交換はしましたからね。なんたって大学教授と知り合えるチャンスなんてめったに無いから、これが切っ掛けでなにがどーなるか分かりませんものね」

 うん、これはいい考え方だな。その時の出合いだけで終わるんじゃもったいないもんな。せっかくの出合いを、後々までつながりが続くようにしたい。つくづく、マダガスカルで会った大学の先生ともっと話ししときゃよかった。


 さて、あんまり散歩が面白くないプレトリア。そろそろ次の町へ移動しよう。次はケープタウンに行くつもりなのだが、こっからケープタウンはけっこう遠い。いきなりケープタウンへ行くのはもったいないので、途中あたりに面白そうな町はないだろうか?宿に泊まってるお客さんに面白い町がないか聞いてみよう。

 庭でノンビリしてる欧米のお姉ちゃん(キレイ)に聞いてみた。

「ねーねー、どっかこの辺でおすすめの町はない?」

「あら、あるわよ。この辺どころか、南アフリカで一押しの所よ。私、最高に気に入っちゃったんだから」

「おやまあ、そこはなんてゆう町なの?」

「そこはねぇ、クルーガー国立公園よ。ここからもツアーが出てるわ。三泊四日ぐらいなんだけど、すんばらしいわよぉ!動物なんかイッパイ見れるんだから!キリンから象からライオンからなんでも見れるわよぉ。すんごいエキサイティングなんだから。
 泊まる所もねぇ、公園の中のコテージで泊まるのよ。夜、椅子に座ってるとすぐそこまで動物がやって来るんだから。もうたまらないわよぉ!」

 そおかぁ、動物見るサファリツアーかぁ。アフリカなんだからサファリツアーには行くつもりなんだけど、どーせならタンザニアかケニアで行きたいんだよな。他にはおすすめの場所はないのだろうか?

「あのぉ、他にはどっか良い場所はない?」

「ちょっとぉ、他もなにもないでしょぉ!なぜクルーガーに行かないのよ!動物を見たくないの?クルーガーが一番よっ!」

「あ、いや、その、動物はケニアとかで見たいから、わ、私はクルーガーの方はちょっと・・・。他の所で見所なんかあれば教えていただけると幸いなのですが・・・」

「あらっそうっ、他の所なんか知らないわっ」

 お、怒らせちゃったのかな?・・・やっぱケープタウンに行こう。

 そして私がケープタウンに移動する前日、ひと組の日本人夫婦が宿にやって来た。

「ああっ!!世界一周夫婦やんかっ!!なにやってんの、こんなトコで!!」

 なんと、ジンバブエのハラレで知り合った世界一周旅行中の夫婦じゃないか、とんでもない所で再会だなぁ!しかし、私は明日ケープタウンに移動するのだ。あんまりしゃべれないぞ。

 私はこれから南アフリカ、そしてナミビアへと旅行する予定なのだが、彼らは逆に、ジンバブエからナミビアを旅行し、南アフリカへやって来た。そしてこれからマダガスカルへ行く予定なのだ。

 なんか、私と真逆のコースだな。せっかくなので次に行くケープタウンやナミビアの情報を教えてもらった。やっぱりガイドブックなんかよりも、こーゆー生きた情報が一番ありがたいな。当然ながら私もマダガスカルの情報を教えてあげた。あんなことやこんなことやそんなことや。

 あ、一番大事なことがある。今マダガスカルはプチ雨期なのだ。どうせならもうちょっと時期をおいて移動した方がいいぞ。旅行したわずっと雨じゃあ楽しくないものな。

 しかし、彼らはもうチケットを買ってしまっているのだ。うーん、雨にたたられなきゃいいが。

 私はここで彼らとメール交換したのだが、のちに彼らから来たメールには、こー書いてあった。

「マダガスカルは連日晴天でしたよぉ。雨なんか一回も降らなかったです。たけしさんて、ひょっとして雨男?」

 えーえーえー、悪かったね。どーせ私ゃ日本一の雨男ですよっ!

 そして、次に行くケープタウンでは、私の雨男の才能がいかんなく発揮されるのであった。



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