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 も、もうダメだ、完全にカゼひいてしまった。こりゃまずい。とりあえず暖かいところに行こう。雨の降らないところに行こう。カンパラへ戻ろう。

 もう体調がにっちもさっちもいかなくなってカンパラへ戻ることにした。いったんカバレに戻ろうかとも思ったんだけど、どーせカバレも雨だろうから、晴天が期待されるカンパラまで戻ることにしたのだ。ちゃんと乾いた服も着たいぞ。カゼひいてるときに湿った服なんか着てたんじゃ治るものも治らなくなってしまう。

 ちょっと後ろ髪引かれながらもバスに乗り込んだ。そぼ降る雨の中、バスは最初にカバレへ到着した。ここで乗客を待ってからカンパラへ向かうのだ。相変わらずカバレも雨だよ。やっぱり直接カンパラへ向かったのは正解だった。

 ところが、いつまでたってもバスが出発しないのだ。かれこれ2時間近く待ってるぞ。何人かの乗客が、待ちくたびれて他のバスの方へ行っちゃたよ。後から来たバスの方がさっさと出発しちゃうんだ。本当は私もそーしたいんだけど、カンパラまでの通しチケット買っちゃったから、ここで乗り換えたら大損だもんな。

 しかし、そー思ったのも3時間までだった。3時間待ってもまぁったく動く気配ないんだもん。なんとかこのチケットを払い戻して別のバスに乗ってやる。

 だけど肝心のこのバスの運転手がドコにもいないんだ。だからいきなり他のバスの運転手に交渉してみた。「このチケットでカンパラまで乗せてってよ」って。だけどダメなんだ。そのチケットじゃ乗せられないって。まぁ、そりゃそーなんだろうけどさぁ。

 向こうの運転手が強気で跳ね返してきたらコッチも強引に交渉しようって思ってたんだけど(しかし、今思うとものすごくゴリ押しだな)、なんか申し訳なさそうに謝ってるんだもん、こっちの方が申し訳ないよ。

 それにしても、悪いのはこっちの運転手だ!いったい何やってんだ!

 憤慨しながら隣の席の人に聞いたのだ。ウガンダでは珍しくサラリーマン風のおっちゃんだった(幸運にもこの人は英語がしゃべれた)。

「ねー、このバスどーなってんのさっ!全然動かないジャン。何がどーしてこーなってんの?」(八つ当たりもいーとこだ)

「いやね、なんか書類の不備があって今警察ともめてるんだ。書類さえちゃんとなったら出発するから、問題無いよ」

 なんなんだ、また書類の不備かよ。そーいえばモザンビークでもそんなコト言ってさんざん待たされたよな。もー待つのはイヤだ。

「あのさぁ、私このチケットキャンセルして他のバスに乗りたいんだけど、運転手はドコにいるの?」

「いや、待て待て、もう少し待て。書類さえちゃんとすれば出発するから。他のバスよりもこのバスの方がいいぞ」

「ホンマかいなぁ?もう3時間以上は待ってるぞ?ホントにこのバスの方がいいの?」

「モチロンだ。我々はこのバスが大好きなんだ。だからみんなこのバスに乗るんだぞ」

「ホンマかいなぁ?このバスのドコがそんなにいいの?」

「それはな、このバスがすごく早いからだ」

「ちょ、ちょっと待ったれや。このバスのドコが早いネン。いったい何時間待ってると思てんねんな」

「いやいやいや、だから今は書類でトラブッてるからだよ。それさえ済めば早いんだから。他のバスなんかすごく遅いんだぞ。このバスに乗ってた方がいいから。信用しろ」

 ったく、ホンマかいな。なんぼバスが早くても出発しなきゃ話しにならないだろうが。

 結局、バスは4時間以上たった後にやっとこさ出発した。

「おー、ちゃんと出発したぞ。もう大丈夫だ。ここからは早いぞ。どんなバスよりも早くカンパラへ着けるぞ。もう心配するな」

 ホンマかいなぁ。でも、もうどーでもいいや。カゼでボーっとしててあんまり物事うまく考えられないや。暗くなるまでに着いたら文句は言わない。どないでもなれってんだ。

 そんな感じで投げやりにバスに座ってたら、途中の休憩所で焼き鳥を売っていたのだ。串焼きだった。焼き鳥はカセセでも食ったけど、そこそこウマかった。ここのも食っとくか。

 あんまり期待せずに食ったんだけど、・・・ウマイ!!あれますんごくウマイ!なんか日本の焼き鳥に近い味だ。私はあわててもう一本追加した。

 いやー、ウガンダで食い物がウマイと思ったのは2度目だよ。こんなコトならもっと早く食っとけばよかったな。バスの移動中にこの手の焼鳥屋さんはけっこういたのだ。うーん、気がつくのがチョット遅すぎるぞ。

 なんにしても、ウマイもん食ったら少し元気が出てきた。そして、バスはあっとゆう間にカンパラへ到着したんだ。本当に早かった。3時間ちょっとで着いちゃったよ。

 そして、隣のおっちゃんは、私に聞こえるように独り言を言った。

「うん。やっぱりこのバスは早い。こんなに早くカンパラに着いたぞ。うん。やっぱりこのバスにして正解だ。いや早い早い」

(そうだね。あなたの言うとうり、このバスは早かったよ)

 ・・・何であのときそーゆーセリフがはけなかったかなぁ。せっかくの独り言なのになんのリアクションも返せなかった。・・・と、とりあえず宿に行こ。ほんで寝よ。

 カンパラは予想どおり晴天だった。洗濯物もカラッカラに乾いた。これならカゼもすぐ治るだろう。・・・とゆうのは大甘だった。カンパラに来てカゼ悪化しちゃったのだ。

 だって、ここ暑いんだもん。メチャメチャ暑いんだもん!キソロとかカバレは天気悪くて涼しかったんだ(寒い?)。そんな場所からいきなり灼熱のカンパラに来たらそりゃ良くないよ。なんか昼間の暑さでカゼが悪化してしまった。

 おまけに夜が最悪だった。最初はちょうどいい温度だったんだ。暑くもなく寒くもなく。これなら気持ちよく熟睡できると思ってた。そしたら、夜中ガタガタ震えて目が覚めてしまったんだ。

 私はドミトリーに泊まってたんだけど、一緒に泊まってた地元のバカが夜中扇風機ガンガン回してんだよ。お前なぁ、この気温のドコに扇風機が必要なんだ!気持ちよく寝てる兄ちゃんに心の中で怒鳴ってしまったよ。私はあわてて扇風機止めましたよ。そしたら又いつの間にか扇風機が回ってるんだ。

 ガタガタ震えて扇風機止めちゃあ寝ちゃあ又震えちゃあ扇風機止めちゃあ寝ちゃあ・・・ロクに寝られやしない!

 翌日文句言ったら素直に扇風機を我慢してくれたけど、新しい泊まり客が来たら又同じコトを繰り返さなきゃならない。

 とどめはシャワーだ。私はキソロとかじゃあロクにシャワーを浴びてないんだ。あっちは水シャワーしかないのだ。カゼひいて寒い時に水シャワーなんか浴びたんじゃ自殺行為だと思って我慢してたのだ。

 なもんだからカンパラに来て久々にシャワーを浴びた。こっちは暖かいくせにホットシャワーが有るから安心して浴びたんだ。そしたらあなた、体洗って再びシャワー浴びようとしたら、水になってやがんの。

 お前なぁ、やめてくれよ。何もこんなタイミングで水になるこたないだろ!!

 私はカンパラに戻ってますます体調悪くなっちゃったよ。

 も、もう帰ろう。ナイロビに帰ろう。治安最悪でも生活環境は快適なナイロビに帰ろう。

 ナイロビはほとんど赤道の真下だけど、標高が高いから気温はいつも快適なのだ。暑くもなく寒くもなく。病気療養には最適な場所に思えてきた。

 思うが早いか私は荷物をまとめてバス停に向かっていた。そして、バスはあっとゆう間にナイロビに向けて出発した。

 カンパラからナイロビ国境にに向かうバスの中、私はずーっと景色を眺めていた。そー言えば行きしなはずっと寝ててロクに景色を見てなかったんだ。

 すんげぇいい景色だった。

 深い緑の森がずぅーっと続く素晴らしい景色だった。唐突に私は途中下車したくなってしまったよ。ウガンダはこんな緑豊かな国だったんだ。なんか、私はウガンダを全然見てないような気になってしまった。なんか、ものすごい心残りだ。

 ウガンダ、待ってろよ。今度来るときは体調万全にしてイヤってゆうほどアッチコッチ見て回ってやっからな。

 最後に途中のバス停でおいしい焼き鳥食って、私のウガンダ旅行は終わった。後はイミグレで出国手続きするだけだ。

 ウガンダの出国手続きもなんの問題も無い。パスポート見せて出国スタンプ押してそれでおしまいだ。・・・あれ?出国カウンターのお姉ちゃんが、私のパスポート見て首かしげてるぞ。

「ねぇ、あなた、学生料金でビザ代払ってるけど、あなた学生なの?」

 どっきぃー。

「あ、ま、そ、も、モチロンですとも。わたくしは学生です」

「あらそう。じゃあ学生証見せてちょうだい」

 どっきぃー。

「わ、わたくし、学生証は持っておりません」

「あら?じゃあ、どうやってあなたが学生だってことを証明できるの?」

「あ、いや、えと、えーっとぉ、それはなぜならば、私が学生であることを私が知っているからです」

「あら、まあ、クスクス。なぜならばあなたが知っているからなのね。クスクス。分かったわ。」

 おやまぁ、お姉ちゃんみょうに嬉しそうに出国スタンプ押してくれたよ。いやあーウガンダ、なかなかシャレが分かるじゃない。

 なんにしても、無事に出国した。さあ、ナイロビに戻ってしっかり休もう。



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