はい、翌日です。

　実は宿変わったんだな。だって、あの宿にずっと泊まってるとどーなってたかわかんないんだもの。例のお姉さん、翌日からもイッパイ色目使ってくるんだもの。散歩しようとしたらいきなり寄って来て腕組んだりするんだもの。欧米カップルが見てニヤニヤしてんだもの。彼らはきっと誤解してるぞ。

　で、最初は当然パウパウロッジに泊まろうと思ったんだけど、それはやめた。

　実は昨日、パウパウロッジを訪ねて行ったんだな、情報集めに。そしたらなんか、すごく雰囲気悪いんだ。宿の兄ちゃんは愛想悪いし宿の中もあんまり手入れされてなさそうで、なんか全体的に投げやりな宿、とゆう感じだった。泊まってる人に宿の感想とか聞こうと思ったんだけど、昼間なので出かけてるのか、だれもいなかった。

　しかたないので情報ノートだけでも見せてもらおうと思ったら、宿の兄ちゃんは「オレはそんな物知らない！」とか言ってぜんぜん相手にしてくれない。

　何だこの宿は！こんな所に泊まっても全然楽しめないと思うぞ。あー、タクシーの運ちゃんが宿間違えてくれて良かったよ。いくら有名な宿だか知んないけど、こんな所じゃそのうち潰れるぞ。

　そんなこと思ってたから、とてもじゃないがこの宿には泊まれない。で、ガイドブックとにらめっこして決めた宿が『パームロックビラ』とゆう宿だ。

　比較的最近出来た宿で、欧米人に人気だとか。今の宿からわりと近くなので（パウパウもすぐ近くなのだが）、さっそく移動した。宿代は前の宿より少し高めだが、比較的キレイで悪くないぞ。

　で、以外だったのだが、日本人がすごく多いのだ。聞いてみたら、ここ最近パウパウロッジの評判がすごく悪くなり（宿に頻繁に強盗が入るらしい。宿のオーナーとグルなんじゃないかとゆう噂もある）だんだんと日本人旅行者も泊まらなくなってきたのだそうだ。そして、このパームロックビラが新たなる宿として注目を集めだしたらしい。そして、嬉しいことに、パウパウにあった情報ノートもすべてこっちの宿に持ってきてくれたのだ。これはありがたい！

　と、ゆうことで、宿にいるみなさんと色々お話しをした。いやぁーやっぱアフリカを旅するだけあって、個性的な人が多いぞ。

　二人してアフリカを旅してるカップルや、これ又二人して会社を辞めて世界一周旅行中の夫婦や、アフリカにはまってアフリカ中の国を旅し続けてる元自衛官や、後ろから見たら絶対女の子にしか見えない長髪の普通の会社に勤めてる人や（あの髪型で普通の仕事をしてるのだろうか？とても普通には見えないのだが）、私と同年代のおばちゃんや（あ、違った）お姉さんや、なんやかや、とんでもない人達がいっぱいいる。

　そして、みなさん旅行期間が長いのだ、２年や３年、ずっと旅行を続けてる人がざらにいる。「いやあ、私はまだ一年ぐらいしか旅行してませんよ」と言う人もいたが、あんた、まだ一年ってことはないでしょう。十分長いがな。

　そして、全員に共通して言えることなのだが、偉そぶってる人が全然いないのだ。それと、見てくれがみんなキレイなのだ。世界一周夫婦なんか、二年近く旅行しているのにもかかわらず、すごくキレイな格好をしている。見てくれだけで言ったら、「二泊三日のツアーで来ましたぁ。自由時間でちょっとこの宿におじゃましてまーす」てな感じなんだよ。これは、アジア旅行中では見られなかった現象だ。

　アジアを旅行してて時々出会うのが、『自称旅の達人』だ。なにかってぇーと自分の旅の自慢をして、やれ、「そんな旅じゃダメだ、オレなんかなぁ・・・」「なんだそりゃあボラれてるよ、そんなんだから日本人はなめられてオレらが苦労させられるんだよ」「え？二泊三日の旅ぃ？そんなの旅じゃねーよ。最低一ヶ月は旅しなきゃ、この国の事なんて絶対わかんないね」とかとか、横で聞いてるだけでもうっとおしい奴がいるんだ。オレには話しかけてくるなって思ってしまう。んで、そーゆー人らは大抵汚い格好をしていた。いかにも「オレは旅で苦労してるんだぜ」とゆうのを表現したいのだろうか。

　この宿には、その手の人が全然いなかった。『自称旅の達人』に比べたら、よおーっぽどスゴイ旅をしてる人達ばっかりなのに。話しのネタとして「いやあー実はあそこでこんな大変な目にあってねぇ」とか面白おかしく喋る人はいても、それを自慢話しとして喋る人は一人もいなかった。

　これは、後々アフリカを旅し続けて分かったのだが、アフリカの旅行、大変なのだ。それはもう、大変なのだ。アフリカ旅行に比べたら、アジア旅行はなんて楽だったんだろうなーって、シミジミ思ってしまったよ。私の進んだコースは、アフリカ旅行の中でも一番楽な、南から北へ単純に北上するコースなのだ。このコースに関しては、情報だっていっぱいある。そんな一番楽なコースでさえ、こんだけしんどいんだから、上級者コースがどんだけ大変か想像もつかないぞ。

　そして、そーゆーしんどい大変な思いをしたからばこそ、自慢するなんてことがバカバカしいんだろうな。偉そうな自慢話しする奴に限って、本当の苦労はしてないんじゃないだろうか。

　で、そんな素敵な連中と色々話しをした。そこで面白かったのがエジプトにあるサファリホテルの話し。

　そのサファリホテルはアフリカで、いや、世界でもものすごく有名な日本人宿なのだ。北から下って来た人は、ほとんどその宿に泊まっていた。で、もちろんここにいる人達も何人かその宿に泊まっていたのだ。そして、色々と教えてくれた。

　なんでも、そこには２年以上泊まり続けてる旅行者がいるのだ。なんか、ものすごい個性のある人らしい。

「いやあ、オレも旅行してて色んな個性的な旅行者に会ったけど、あんな人は初めてだね」

「ど、どんな感じの人なんですか？」

「いやいやいや、どーせエジプトまで行くんでしょ、それまで楽しみにしてた方がいいよ。顔知らなくても一目見たら、あーこの人かってすぐ分かるから」

「顔知らなくても分かるの？どーなんだろ、恐そうな人なの？」

「あ、全然恐くない。とりあえず、初対面の時はおもいっきりビックリするかもしれないけど、本当はいい人だから」

「初対面でビックリするの？見てくれが変なの？」

「うん、すごく変！」

　い、いったいどんな人なのだろうか？順調に旅行できればきっとエジプトまで行くから、その宿に泊まってみようか？多分エジプトに着くのは半年ぐらい後になると思うけど、その人って、その頃でもエジプトにいるのかなあ？

　そして、彼らがサファリホテルに泊まってた頃、別のとんでもない旅行者が泊まっていたそうだ。その人は、『自称、おかまパッカーのＭちゃん』

「お、おかま？おかまなの？」

「そーそー、完璧におかま。面白い子だったよ」

「そ、それ何？女装とかして旅行してるの？」

「いや、女装とかはしてない。格好は男なんだけど中身は完全におかまなんだよ。すごいよ、宿にいる男の子を片っ端から口説いてるんだもん」

「ほんまかいな！えー？あんたも口説かれたの？」

「え？あ？う、うん。ちょっとね。でも、オレは無事だったけど」

　無事？無事じゃなかった人はどーなってしまったんだろう？

「そうなのよ。あたしもＭちゃんと仲よかったけど、かなり積極的にアタックしてたわよ」

「えーおばちゃんも、あ、いえ、お姉さんもその時サファリにいたんだ」

「そーそー。それでね、Ｍちゃんとあたしと、あと他の女の子と三人で地下鉄乗ったのよ。そしたらさぁ、あたしら女の子は無傷なのに、Ｍちゃんだけチカンにあったのよー。失礼しちゃうわよー。エジプト男見る眼ないわねーって、その女の子と言ってたのよ」

「へえー。それで、もう一人の女の子は若かったんですか？」

「そうよー。もう一人の女の子も若かったわよ」

　しかし、世界は広い。出来ることなら、私もそのおかまちゃんに会ってみたいぞ。

　そんな話しを色々してるとき、とんでもないことを教えてもらった。なんと、ここジンバブエは現在、両替レートがメチャクチャになってるらしい。銀行などで受け付けてる正規の両替レートと、いわゆる闇両替のレートが、倍ぐらい違っているそうなだ。なので、旅行者はおろか、地元の人でさえ銀行で両替する人はいない。

　ちょっと待て、わ、私は空港で両替したんだけど、あれって正規レートなの？

「ええぇ！？空港で両替しちゃったの？しかも１００＄？！！それ、当然正規レートだよ。知らなかったの？」

　し、知らなかった。なんとゆうことだ。すると私ったら、５０＄ドブに捨てたことになるの？もー遅いよなあ。だって、けっこう新しいガイドブックにだってそんなこたぁ書いてなかったもの。

　んで、色々聞くと、闇両替と言っても路上での両替ではないらしい。ちゃんと両替商がいて、ちゃんと看板出してお店をかまえているらしい。

　しかしなあ、その手のお店ってほとんどトラベラーズチェックは扱ってないよなあ。オレ、今回ほとんどＴ／Ｃしか持ってこなかったんだよなあ。

「うーん。Ｔ／Ｃ扱ってる両替屋もあるにはあるけど、レート悪いよ。ま、正規レートに比べりゃあそれでもだいぶん得だけど」

　うーん。初手からつまづいてしまった。今回の旅行用に用意したお金は、Ｔ／Ｃが９，０００＄。ＵＳ＄の現金が５００＄ぐらい、そして日本円（帰国した時用）が２万円ぐらいだ。

　現金を大量に持ってると取られた時に恐いから、現金は最小限にして、ほとんどをＴ／Ｃで持ってきたのだ。現金はビザ代とかＴ／Ｃが使えない国とか用で、現金が少なくなったらそのつど銀行でＴ／ＣをＵＳ＄の現金に再両替するつもりだった。

　南アフリカ、ナミビア、タンザニア、ケニア、エジプト。少なくともこれらの国では、Ｔ／ＣからＵＳ＄の現金に再両替が出来るはずだった。ちなみに、ジンバブエでも再両替出来るはずだったのに。

　うーん、さい先悪いな。ま、でもなんとかなるだろう。

「あ、それからねえ、この国にも路上の両替商がいて、レートはいいんだけど。絶対に路上で両替しちゃダメだよ。ほっとんどの人がだまされてるから」

　うーん、そうなのか。なけなしの現金だまし取られた日にゃあ、目も当てられないなあ。

　だまし方はお札を数えるのをごまかしたり、金を受け取ったとたん「警察が来た！」とウソ言って走り出すとか、ニセ警官（ひょっとして本物？）とグルになったりとか色々あるそうだが、なんにしてもマトモに両替出来た人はほとんどいないそうだ。

　そーゆー話しの流れで、ハラレの治安についても教えてくれた。以前は比較的（あくまで他の治安の悪いアフリカ諸国との比較ね）治安の良かったハラレであるが、ここんところ、だいぶ治安が悪くなってきているそうなのだ。私がこの宿に越してくるちょっと前も、宿のすぐ近くで日本人カップルが襲われた。

　夕方、近くのスーパーでの買い物帰り、宿に向かって歩いていると（けっこうデッカイ道）いきなり女の子が後ろから羽交い締めにされたのだ。そして４〜５人の黒人がまわりを取り巻いて、「おら、金出さんかい！」とやったんだな。

　男性の方は、女の子が押さえられてるもんだから抵抗できず、持ってたお金（たーまたまその時大金持ってたんだ）全部取られてしまったそうなのだ。幸い、その人達にケガはなかったそうだが、こーゆー場合、無抵抗が一番いいんだろう。もし抵抗してたらどーなってたか分からない。たとえお金やパスポートやらが無くなっても、体が無事ならなんとでもなるもんな。うーん、私も注意しなければ。

　ちなみに、治安がだんだん悪くなってきた首都のハラレであるが、その後、治安の悪さはもっと悪化していく。