さてぇ！本日は皆既日食当日だっ！観測地点はニャマパンダだ！観測メンバーは、まず私。それから、おかまちゃんに襲われかけた男性に元自衛官に長髪のサラリーマン、この四人だ！

　ニャマパンダへの行き方は、まずミニバスでムバレとゆう所に行き（こっからジンバブエ各地への長距離バスが出ている）そっから長距離バスに乗ってニャマパンダを目指す。終点だから寝ててもへっちゃらだぁ！

　実はこの宿に越してくる前に、ツーリストインフォメーションでニャマパンダの行き方だけは調べてたんだけど、ムバレから行くってことは分かってたんだけど、ムバレの行き方だとかその辺はあんまり分からなかった。彼らがいてくれて助かったよ。

　んで、彼らにまかせっきりで出発。５時間ぐらいかかってたどり着いたニャマパンダは、・・・なぁんにも無い！こりゃ完全に村だ、集落に近い。日食観測に良さそうな広場でもあるかな？っとか思っていたが、甘かった。ま、天気は良いから贅沢言えないけど。

　日食までにはまだまだ時間があったので、モザンビークとの国境を見に行くことにした。バス停から歩いてすぐだ。

　いやあ、何にも無い国境だよ。ぼろっちいゲートがあるだけで、後は何にも無い。ゲート挟んで係員と握手なんかしちゃったりして、緊張感のない国境だ。なんか好きだぞ。モザンビークに行くときはこの国境を渡るのだろうか？（実際はここの国境はモザンビーク側の交通の便が悪くて、他の国境を通ってモザンビークに行くのがポピュラーだった）

　ほんとにまあノンビリした国境だった。

　この踏み切りを越えたら、もうモザンビークなんだ。

　さて、いつまでも国境でウダウダやってる場合ではない。早いとこ日食観測に都合のいい場所を探そう。

　太陽がかなり欠け始めた頃、理想的な場所が見つかった。かなり広いキャンプ場だ。ジンバブエの裕福そうな家族が車でやってきてバーベキュウーとかしている。うまいこといったらおすそ分けしてもらえるだろうか？

　日食眼鏡で太陽を見ると、おーーーーだいぶん欠けてるぞ！今は太い三日月状態だ！皆既までにはまだまだ時間がかかりそうだが、ジンバブエ人の子ども達とワイワイガヤガヤしながら見てて、・・・え？金払え？

　なんか、ここ、入場料がいるらしい。入る時、なんかそんな気もしてたのだが、なんにも言われなかったから安心してたのに。

「あの、日食見るだけだから。日食終わったらすぐ出るから・・・。え？ダメなの？」

　ほんとにもーっ！ダメならダメで入る時に言えよな！もう時間が無いじゃないか！急いでキャンプ場を後にして、新しい観測場所を探さなきゃ。せっかく皆既日食見るんだから、どーせなら環境のいい場所で見たい！別にキレイな場所でなくてもいい。贅沢は言わない。広い空が見渡せて、回りに木々があって自然に囲まれてる所がいいな。って、十分贅沢か。

　他の３人は、なんだか知らないけど裏の山道をドンドコ進んで行く。あ、あんたらなぁ、ここ始めての場所やろ？そんな適当に歩いてったら迷子になるで？

　私の心配をよそに、彼らは「こっちの方がいいんじゃないの？」「いや、こっちの方がいい場所に行きそうだよ」とか、ずんかずんか進んで行く。私としては、もう、この見晴らしの悪い中途半端な道でもいいよ。早くしないと皆既が始まっちゃうよ。ほら、太陽さあ、かなり細くなってるよ。とか思ってた。

　すると、なんと、ものすごく理想的な場所にたどり着いた。人様のお庭だったけど。ものすごく広々とした場所で近くにはバオバブの木があって景色の良い自然に囲まれて、ひっろびろとした場所に一軒の家があって、しかも茅葺き屋根（風）の家で、これ以上は無い！とゆうロケーションだった。

　彼ら３人は何者だ？なんで始めての土地でこんなパーフェクトな場所にたどり着けるのだ？人間ナビゲーションシステムでも備えてるのだろうか？

　茅葺き屋根の家からは、なんか１０人ぐらいのジンバブエ家族が出てきた。なんか、ビックリしてたよ。そりゃそーだよな、いきなり家の庭に（どっからどこまでがその一家の庭なんだかよく分からないが）見たこともない日本人が４人もいるんだから。

　ひょっとしたら「うちの庭で何してるだっ！」ってもめだすかと思ったが、みんな、私たちを歓迎してくれた。こーなりゃこっちのものだ！自慢じゃないが日本人バックパッカー、地元の人達と馴染むことにかけちゃあどこの国の旅行者にも負けないぞ（と個人的に思ってるぞ）。

　家の子供達に日食眼鏡（部分日食見る用の真っ黒な眼鏡）貸してあげたら大喜びだよ！子供どころか大人達も夢中になって太陽を見てる。言葉は通じないが、「おーー、すっげーーー」とか言ってるのが分かるぞ。

　このお家の庭で日食を見させてもらった。最高の場所で家の人達も優しかったのだ。

　眼鏡まわしながらワイワイ写真撮ったりしてると、いよいよ皆既日食の瞬間が近づいてきた！かーなり太陽が細くなったぞ。おーーーーー肉眼で太陽が見えるようになった！おーーーーあたりがだんだん暗くなってきたぞ！と、ゆうことは、もうすぐ皆既の瞬間だ！

　え？オレの写真を撮ってくれ？おーよっしゃよっしゃ。やっぱこーゆー瞬間の写真は欲しいよな。あ、ダメだダメだ、皆既中のストロボは御法度なのだ。ストロボの光で目が明るい光に反応してせっかくの皆既が見えなくなってしまう。ゴメン！せっかくだけど写真は撮れないよ。それよか肉眼でしっかり見てた方がいい。あ、ほら、地平線を見て見ろよ、３６０度夕焼けだ！こんなの普通の時では絶対見れないよ！うっわーすげー！あ、ダイアモンドリングだ！！ああー、終わってしまった。

　なんか、皆既が終わっても興奮は終わらない。みんな「すっげーすっげー」とか言い合ってる。ジンバブエ人とも、言葉は通じないのにこの興奮と感動は通じちゃってるよ。

　いやぁ、生涯２度目の皆既日食。見に来て良かった。本当に良かったぞ！

　これは皆既中の写真です。当然ストロボなんかは焚いてない。空は真っ暗だ。

　でも、なぜか明るいのだ。明るいってのはちょっと変な表現だけど、不思議な光のまわり方をしていた。

　だがしかし、今回の日食で、一つだけ残念なことがあった。

　前回のイランの日食を見た時に、皆既の直前に、体と言うか精神と言うか、ある異変があったのだ。そして、皆既が終わった瞬間、もーーーのすごい疲労感を感じた。

　しかし、今回は、その手の感覚は皆無であった。ちょっと悔しい。そーすると、前回のあの感覚は何だったんだろう？イランの日食の時だけ、なにか違う条件があったのだろうか？少なくとも、あともう一人同じ感覚をあじわった人がいたので、私の錯覚ではないはずだ。うーん。あれはいったい何だったんだろう。

　興奮さめやらぬまま、ニャマパンダをあとにする。ニャマパンダ一家も手を振って送ってくれたよ。ありがとうねー。楽しかったよー。

　さて、そのニャマパンダ。今回ニャマパンダで日食を見るにあたって、一つだけ問題があった。それは、

『ひょっとしたら帰れないかもしれない』

　実は皆既の開始が結構遅かったのだ。皆既終了時には、けっこうな夕方になってしまう。で、問題は、そんな時間まで長距離バスが出てるか？とゆうことだ。最悪ニャマパンダで野宿とゆうことになってしまう。ここニャマパンダ、どー考えても宿泊施設は無いぞ。

　とりあえずバス停らしき場所でバスを待っていたが（国境地点からはだいぶ離れてしまった）、なかなか来ない。そこで動き出したのが元自衛官とおかま襲われかけ男性だ（こんな呼び方はあんまりだよなあ。とりあえずＫさんにしとこう）。

「よっしゃ、オレ達が国境まで行ってバスが出るかどうか確認してくるよ。もし帰ってくるまでにバスが来たら、絶対引き留めてくれよなあ！」

　いやあ、この人達にはホントにおんぶにだっこだよなあ。よし、もしバスが来たら意地でも引き留めといてやっからな！

　んで、しばらくしたら（だいぶ時間がたったが）バスが来た！なんか、そのまま通過しそうな勢いだ。こ、これは、ちゃんと引き留めなくてわ。

　で、急いでバスに駆け寄ろうとしたら、バスから大声で呼ばれた。

「おーーーい、ジャパニーーーーー！このバスハラレに行くぞーーーー！早く乗れぇ！」

　み、見たら自衛官とＫさんじゃないか！日本人が日本人に向かってジャパニも何もないもんだと思うが、いやあ、助かった。これで野宿はまぬがれたぞ。

　けっこうギュウギュウ詰めであるが、なんとか座ることが出来た。私の隣は超巨大太っちょおばちゃんだ。なんかおばちゃん、二人掛けの椅子の３分の２は占領してるぞ。ま、座れるんだから文句も言えないが。

　しばらく走ってると、なんか知らないが、バスん中で大合唱が始まった。最初一人のおばちゃんが歌いだしたのだが、それがだんだん広まってバスの乗客全員での大合唱になってしまったのだ。多分有名な歌なのだろうが、そのうち、なんか、替え歌になってしまった。

「おーれほりゃほらチャイニーズ。ほーれほりゃふりゃジャパニーズ。うーれおりゃうりゃコーリアン」

　なんか、適当に言えばどれか当たるだろう的なおおざっぱな替え歌だが、なんか嬉しいぞ。

　後ろを見ると、他の３人は思いっきり盛り上がって手拍子やら合いの手やらを入れている。私と言えば、ちょっと乗り遅れてしまった。

　私、いつもそうなのだが、旅行始めて最初の頃は、なんか調子が出ないのだ。外国の雰囲気にけおされるのか、ちょっと小さくなってしまうところがある。で、その悪い癖がこんな肝心な所で出てしまったのだ。

　うーん、くやしいな。ほかの盛り上がってる３人を見てうらやましかった。

　うらやましがってばっかりじゃイカン！私の旅はまだ始まったばかりだ！希望に、向かーあってぇ、今日も歩き始めーよーおーー！