さて、日食観測を終えて宿に帰ってきた。泊まり客のほとんど全員が日食を見に行っていたよ。私達のように日帰り組もいれば、２〜３日の泊まり組もいる。泊まり組の人達はみんなテント持参で泊まり込んでいる。

　アフリカ旅行をする人の中には、テントを持参している人が多い。アフリカには宿事情のあんまり良くない国があり、そんな国ではテントの野宿で泊まり歩くことになるのだ。私にゃあちょっと無理だな。アフリカでテントで野宿する根性は、今の私にはない。それが為に入国を断念した国もある（ボツワナとかね）。

　で、泊まり組の人達はまだ帰ってないので、日帰り組の人達と日食の話題で盛り上がったのだ。あーでもないこーでもない。いやあすごかった予想外だったとか、みんな言葉にならない言葉を発してる。これは分かるのだ。前回もそうだったけど、あの感動はなかなか言葉では言い表せないのだ。ホント、あれは見た人でないと分からないぞ。テレビで見たって全然違うんだから。もし機会があれば、絶対に見ることをおすすめするぞ。

　そんな中、私に嬉しいことを言ってくれた人がいた。

「あなたにアドバイスしてもらって良かったよ。おかげで日食をうんと楽しめたもの。ありがとう」

　いやあ、これは嬉しい言葉だった。

　宿のみんなと話しするとき、私はほとんど聞き役だった。始めてのアフリカ旅行である私に対して、みんな色んなことを教えてくれた。危険地帯だとか効率のいい移動ルートだとか両替情報だとかお勧め地域だとか、色んな事を教えてくれたのだ。

　そんなことのお返しに私が教えてあげられるような事なんか、ほとんど無かった。私が行ったことがあるような場所は、みんなさんざん行っているのだ。

　が、そんななさけない私でも、自信を持って言えることがあった。皆既日食に関してだ。こればっかりは私しか見た人がいなかった。で、色んな事をしゃべったのだ。今となっては何しゃべったのかてんで覚えてないのだが、どーせたいした事は言ってないと思うのだが、それでもそーゆーふうに感謝してくれた。うれしいよなぁ。

　そして、そんな日食話しの中で『パーティー』の話題が出てきた。毎回日食を追いかけてパーティーをやる、非営利団体が（営利団体もあるらしい）あるそうなのだ。

　レインボーなんとかと言うらしいのだが、数百人もの人が原っぱ（？）に集まって、日食の前後何日間か団体でテント生活のドンチャン騒ぎをするらしい。各自適当に分担し、金のある人が金を出し、食料のある人が食い物を出し、何もない人は料理を作ったり焚き火を作ったり。誰も強制しない。何もしない人は何もしない。参加も自由なら途中で出ていくのもみんな自由。せっかく自然が与えてくれた大イベントなんだから、みんなそろって楽しもう！とゆう主旨らしいのだ。

　うーん、知らなかった。なんか、ものすごい興味があるぞ。見てみたい、参加してみたい。もし事前に知っていればきっと参加したかもしれない。今回はザンビアの方でそのパーティーがあったそうなのだ。

　ザンビアかー。最初はザンビアで日食見る予定だったのだが（ザンビアなら首都で見れた）色々調べてみると、ザンビアはあんまり面白そうな国ではないのだ。物価は高いくせに見所があんまりないのだ。他の旅行者もみんな通り過ぎるだけらしい。なもんだから私はジンバブエで見ることにした。もしザンビアに行ってたら、私もパーティーに参加できたかもしれない。

　今更言っても遅いが、まあ、きっと今回は呼ばれていなかったのだろう。でも、そのかわりジンバブエで色んな連中に出会えたのだ。そして、この旅を続けていくうちに再会する人達もいる。ここでの出会いがあったればこそだ。そう、今回はジンバブエに来て良かったのだ。

　さて、そんな日食話しで盛り上がってる中、一人だけ話しに乗ってこない人がいた。同年代のお姉さんだ。

「ねー、どーしたの？日食感動しなかった？」

「違うの、私、日食見に行かなかったから」

「な、なんでーー！？ジンバブエにおるのに何で日食見なかったのー！」

「あ、でも、宿の庭で部分日食は見たから」

「ちょっとちょっとちょっと、部分と皆既は全然違うがな！オレ、ゆーたやんか！」

「お、おんなじようなもんじゃないの？別に、私はあれでもよかったから」

「ちゃうっちゅーに！あんなぁ、この日食を見るためにわざわざ日本から何十万円もつこうて来る人もおるんやで。それやのに、あんた、たった数百円出したら見に行けるのに、もったいないがな」

「でも、泊まりがけでしょ。泊まるとこないんでしょ」

「ほな、オレらと一緒に来たらよかったのに」

「やだよ。野宿するかもしれなかったんでしょ。野宿はやだもの。それに、私黒人恐いもの」

　恐いものったってなあ、オレらがおるがな。そりゃ、知らない男３人と野宿するのは抵抗あるかもしれないけど、それは分かるんだけど、でももったいないよなぁ。こんなチャンス、もう二度と無いぞ。ほかの人もやいのやいの言ってるよ。もったいないって。

　そんな、もったいないオバケが出まくりのおばちゃんを（もう、おばちゃんでいいのだ）いじくりながらやいのやいのやってると、ああっとゆう間に数日がたってしまった。日食泊まり組も帰ってき、新しい泊まり客とかもやって来た。

　で、そんな中で楽しかったのが夜のご飯。みんなで自炊をしてご飯を作ってたのだ。最初は私は指をくわえて見てただけだったんだけど、そのうち仲間に入れてもらった。いやあ、みなさん料理がうまい！自慢じゃないが私は料理が出来ない！皿洗いとか買い出し専門に手伝ってた。

　で、ビールを飲みながら（物価が安いので迷わず大瓶ビールが買える！）大勢で飯を食う。これがウマイのだ！そして、偶然なのだが、泊まり客の中に本職のコックがいた！！ウマイ！！！めっちゃくちゃウマイ！！！他の人が作った料理もウマイのだが、彼の作る料理はレベルが格段に違っていた。よくもまあこんな材料からこんなウマイ料理が作れるもんだと感心してしまったよ。おかげですごい贅沢な夕食を食うことが出来た。

　ユニークな宿の住人達。

　よくもまあこんな変な、そして気のいい連中が集まったもんだ。

　さて、そんなこんなで数日過ごすうちに、だんだん泊まり客が入れ替わってきた。南アフリカへ行く人や北上する人やジンバブエのほかの土地へ行く人や。私もあまりここにばっかり居座るわけにはいかない。旅行の最初で沈没するわけにはいかないものな。

　と、ゆうことで、私も次の場所を目指すことにした。次は、グレートジンバブエだ！