オバちゃんの中国語をちゃんと理解すべく、中国人真面目カップルの２人に手伝ってもらうことにした。彼らにもまんざら無関係ではないし、それに彼らは英語がしゃべれるのだ(かなりペラペラ)。しかし、問題は私達が英語をあんまり理解できないとゆうことだな。と、ゆうことで、ついでにコトっちゃんにも手伝ってもらうことにした(彼もまた、英語がペラペーラなのだ)。

　オバちゃんの中国語から中国人カップルの英語、それからコトっちゃんが日本語に訳し、かなりややっこしいが、なんとか会話が成立した。

　ところで、そのややっこしい会話が始まる前に、タンタンが私の方に近寄ってきた。私の背中をトントンとつつき、「トイプーチー(ごめんなさい)」と言ってくれたんだ！

「あ、え、その、トイプーチーって、さっきのことか？私が暴れたとき「プーハオッ！」とか言って、あの、私を怒ったことか？私のこと許してくれるのか？」

　タンタンは、コクコクとうなずいて笑顔を見せてくれた。そればかりか、私を指さして「ヘンハオ(あなたって、素敵だわ)」とまで言ってくれたのだ！

　オヂサンは嬉しかったよーー！このままタンタンに嫌われっぱなしで宿を出るのか、と思って気持ちが沈んでいたのだ。嬉しくなって、オヂサンは思わずタンタンを抱きしめてしまったよ。

「お前、これから複雑な話ししよーってときに、なにニヤツイてんだよ」

「あ、いや、別に、その」

　どーしてもニヤニヤが止まらない。おっとっと、気持ちを入れ替えなくては！

　中国語、英語、日本語の３カ国語会議で明らかになったことは、先程のオバちゃんの説明とホボ同じだった。

　しかし、なんであのカップルの手帳が中年部屋にあったのだろう？それから、あとひとつ不思議なことがあった。例のカップルが出てった日に、宿の電線が切られていたのだ。そー言えばオッチャンが停電がどーのこーのと屋根を調べていたが、どうも、明らかに誰かの手によって電線が切断されていたそうだ。いったいなんなんだろう？誰が何の為にそんなコトをしたんだ？わけわかんなくて頭が混乱してしまった。

　混乱しているのは、真面目中国人カップルも同じだった。そんなコトがあったなんて信じられない。あんなにニコヤカに別れたのに。彼らとも仲良く一緒に写真を撮っていたのだ。そればかりか、住所交換までしたそうだ。

　もし、これが、あのハイテンションカップルの詐欺だとしたら、アドレスを残していくだろうか？しかも、宿のゲストブックには電子メールのアドレスまで残しているのだ。もしかしたらデタラメのアドレスか？

　オバちゃんが戻った後も。あーでもなにこーでもないと不毛な話し合いが続いた。

　いったい、この事件はどー解釈すればいいんだ？この宿の泊り客にドロボーするヤツがいるとは思えない。あのカップルが詐欺をしたなんてことも思いたくない。じゃあ、じゃあ真相はなんなんだ。これは、あのハイテンションカップルに会いに行くしかないんじゃないか？幸い住所はわかっている。それがウソでなければの話しだが。

　あのカップルの住所は昆明だ。そして、真面目中国カップルは、リージャンの後に昆明に行くとゆう。3日後だ。・・・私もついて行くことにした。幸い彼らは英語がしゃべれる、なんとかコミュニケーションはとれるだろう。問題は、私にその英語がわかるかってことだな。

　翌朝、団長に忠告された。

「彼らに会いに行くのはいいけどさぁ、注意したほうがいいぞ。もし、この事件がやつらの詐欺だったとしたら、一筋縄じゃあいかないぞ。逆切れして怒鳴り散らすかもしれないからな。こーゆうときの中国人は手ごわいぞ」

「え、あ、は、はい。わかりました」(ドキドキドキドキ)

　ち、ちょと不安になってきたぞ。大丈夫だろうか。なんの対策もなしに会いに行って、返り討ちにあうんじゃないか？

　バカはバカなりに、対策を練った。いきなり会いに行くのは不安なので、まずは電子メールを打ってようすを見ることにした。宿のゲストブックにはメールアドレスが書いてあったはずだ。まずはメールの反応を見て、後の対応を考えよう。

　メールを打つっていっても、私が中国語で打てるわけないので、真面目カップルに打ってもらうことにした。話しをしたら快く承諾してくれたし。さっ、オバちゃんにゲストブックを見せてもらおう。

　オバちゃんに事情を説明してゲストブックを見せてもらおうとしたら、オバちゃん、メモ紙になにやら書きだした。けっこう真剣な顔だ。お、オバちゃん、どーしたの？

『没事』『他巳終走了』『好人』『朋友』　

　・・・そうゆうような文字を書いた後、オバちゃんはとうとうと話しだした。それを英語で通訳してくれた。私の英語力では正確なとこはわからないが、オバちゃんが言おうとしたことは伝わった。

「ドロボウなんて無かったのよ。あんた達が財布を盗んだなんて思ってない。それに、あの人達がだましたなんても思ってない。だって、友達じゃない。みんないい人なのよ。あれは、もう終わったことなの。だから、もうやめましょう。コンピューター使って問い合わせることなんて、しなくていいのよ。忘れなさい」

　言葉は出なかった。オバちゃんの顔を見てたら、もうなにも言えなくなった。

「オバちゃんらしい終わらせ方だねぇ」

　帰ってきた団長に説明すると、ポツリとそう言った。

「ホンマですねぇ、自分が一番迷惑したってゆうのに」

　いまだに事件の真相はわかっていない。いったい誰が犯人なのか、なんであの手帳が中年部屋にあったのか、なんで電線が切られていたのか。知りたいコトはいっぱいあった。でも、オバちゃんのあの言葉で、すべては終わったのだろう。

　さて、そろそろ私もココを出ていこう。せっかくだから真面目中国人カップルと一緒に昆明へ行こうかと思ったのだが、なんと彼らは飛行機で移動するそうだ。バスじゃなかったんだ。

「なぜバスなんかでいくんだ？すごく時間がかかるぞ。飛行機ならあっとゆう間なのに」

　不思議そうにそー言われてしまった。・・・だって飛行機代は高いんだもの。しかたないので、１人でさびしく出よう。