文字サイズの変更

色んな事があったけど

やっぱり好きだぜ!イラン!!




 20世紀最後の皆既日食がこの夏ある。それもイランで見れる!こりゃあ行かなくっちゃ!

 イランと言えば旅先で出会う旅行者が声をそろえて絶賛する国だ。親切な人がいっぱいいて旅行者には天国の様だと。一度行ってみたかったのだ。そのイランで皆既日食が見れる!これで行かなきゃ一生の不覚だ!




 さて、そんなこんなでテヘラン国際空港に到着。現在早朝の5時です。町までのバスが出るのが7時頃らしいので、それまで空港の近くをウロチョロしておこう。

「チン?ジャポン?」

 ん?なんだ?道端にタクシーの運転手らしきオッちゃん達がタムロしている。

「えーと、俺、ジャパニーズだけど」

「おージャポン!オシーン、タナコラン!」

 げっ、さっそくオシン攻撃だ。イランでは日本のTVドラマ、「おしん」と「はね駒」が大人気だそうで街を歩くと「オシーン」だの「ハネコー」だの声がかかると言うが、まさか今でも、しかもこんなに速く声がかかるとは。だけど、タナコランってのはなんだ?

「ジャポン、タクシーに乗らんか?なに?バスで行く?バスなんかまだまだ出ないぞ。まーいい、こっち来い、チャイでも飲め」

 いきなりチャイをご馳走になってしまった。こっちのチャイはインドやネパールと違ってごく普通の紅茶だ。しかし、飲み方がチョット違っている。まず砕いた砂糖のかけらを口に入れて、おもむろに紅茶を口に含む。(先に溶かさないのか?)しかもコップからじゃなくて受け皿にすこし移して(こぼしてと言うほうが正確かな)受け皿をズズズッとすすっている。最初は、からかってるんじゃないのか?と思ったが、みんなそーしていた。イラン人は「だって熱いだろ」と言ってるが。

「何で町行くのにタクシー使わないんだ?高いから?日本人は金持ちだろうが。しかたないなー、あの道をまっすぐ行くと道路に出て、そっからならもうバスが出てるはずだぞ」

 おー、ありがとう!さすがイラン人だな、普通なら自分のタクシーに乗せたいはずなのに。イラン人親切説は本当だったんだ。

 道路に出るとたしかにバス停があった。もうバスが来てる!どこ行きだろう?

「エマームホメイニ?」

 安宿街がエマームホメイニ広場と言う所にあるのだが、エマームホメイニっつったらイランで一番尊敬されてる人の名だ。勘違いされないだろうか?しかし、バスの乗客も道端の人達もみんな笑顔で乗れ乗れと言っている。いいか、乗っちゃえ。

 バスの乗客達が色々話しかけてくるが、だれ一人として英語がしゃべれる人がいない。イランでは英語が通じない、と言われていたが本当みたいだ。ま、私だってたいして喋れないが。何とか分かったのは「日本人か?」と言うところだけだった。

 しばらく乗るとみんなが降りろ降りろと言う。もう着いたんだろうか?降りるとたしかに大きい広場だ。5差路ぐらいの道の真ん中を広く取ったような感じで、たしかにガイドブックの地図と似ている。

 しかし、なんて穏やかな町なんだろう。公園が近くにあるのだが、緑がいっぱいあって世話役のオッちゃんがこれでもかって感じで水をいっぱいあげている。木の根元が川になって流れるぐらい水浸しにしている。やり過ぎじゃないのか?とも思うが、そのおかげで川のせせらぎの様になって心地いい。

 まだ朝早い、ここに座ってしばらくボーっとしていよう。

 会社に行くのだろうか?のんびり歩いてる人。公園に座ってのんびりしている人、おじいちゃんから若い人までいる。みーんなのんびりしている。うーん、良い町だ、来てよかった。

 さて、ホテルに行って荷物を下ろすか。そばにいる人に目を付けていたホテルの名前を言って道を訪ねるが、やっぱり分かってくれない。ま、いいか。地図を頼りに探していこう。

 ・・・無い、どっこにも無い!首都の中心街なんだからそこら中にホテルぐらいあっても良さそうなもんだが、どっこにも無い!しかも、どうもガイドブックの地図とこの町が合っていない。ここ、エマームホメイニ広場じゃないぞ。

 なんてこった違う町みたいだ。あわてて道行く人に場所を教えてもらうが、身振り手振りで「この道をまーーーーっすぐ、うーーんと、うーーーんと歩いていけばエマームホメイニ広場」らしい。うーーんと、と言うのはどれぐらいなんだろう?

 とりあえず歩いていこう。うーーーんと歩けば着くんだから大丈夫だろう。

 道行く人がいっぱい声かけてくれる。「ジャポン?」「オシーン」「ナカター」(こりゃサッカーの中田だな)「タナコラーン」(だからタナコランって何だ?)

 パン屋さんの前に列を作って焼きたてパンを買って行く人達がいる(パンというよりはインドで言う所のナンなのだが)。手に持ちきれないほどのナンを抱えて帰っていく子供(おつかいだな)ちょっと覗いてみるがパン屋さんは汗だくだった。しかし、エマームホメイニ広場はまだか?歩き疲れたぞ。

 かなり歩いたところでようやっと、それらしい場所に出てきた。しかし、しかし、雰囲気悪いぞ!いかにも大都会で車がイッパイで人込みで、なんかうっとおしい。手にガイドブックの地図部分を破いて持ち歩きながら来たのだが、たしかに地図と同じ配置だ、やっぱりここがエマームホメイニ広場か。

 なんか生意気そうなガキどもが(18才ぐらいかな)4人ほどよって来た。ニヤニヤ薄ら笑いを浮かべてる。あきらかに今までの友好的な人達とは違うぞ。

 後ろから前から横からちょっかい出してきやがる!「オシーン」「ジャポーン」「ヘッヘッヘ」くそっ!今までのとは違う、人の神経を逆なでする様な嫌な言い方だ。ちきしょー腹立つな!

 完全に無視してたら手ぇ出してきやがった!腹つっついたり背中押したりするだけだが、ムカムカムカムカ(手ぇ出しちゃダメだぞ、よそ様の国の子なんだから)あっ!帽子取りゃあがった!ああっ!それに気を取られてるスキに後ろから頭ハタきゃあがった!!

「ナンさらしとんじゃあーーっ!!このクソガッキャーー!!」もお、よそ様もヘッタクレもあるか!蹴り入れてやる!!

 くっそー!ちょっと離れてヘラヘラ笑いやがって!!ドタマかち割ったる!!くっそー!何て逃げ足が速いんだ!四方八方へ逃げやがって!!

 俺の帽子は道端に捨てやがった!親切なイラン人が申し訳なさそうに拾ってくれた。・・・ちっきしょー!!あのガキどもが逃げた方向を目を引きつらせて探すが、影も形も見えやしない!いつの間にか地図もどっかにいってしまった。くっそー!こんな町に誰がいるか!!移動だ移動だ!さっさと次の町に行ってやる!

 次に行く予定はカーシャンという町なんだが、地図がないからバス停も行き方も分からなくなってしまった。

 町の人に行き方をたずねてみると、言葉も分からないのに何人もよってきて、あーでもないこーでもないと相談してくれる。しまいにゃバス停まで案内してくれて長距離バスターミナルまでの切符まで買ってくれた(そー言えばさっきのバス、金払わなかったな)。本当に何て親切なんだろう。さっきのガキどもと本当に同じ人種か?

 イランという国がよく分からなくなってきた。



前へ戻る ホームへ帰る 進む
イランの目次に戻る