翌朝、やっぱり早朝に目が覚めてしまった。旅行中はいつも早起きだ。

　朝の散歩を開始。日差しはすでに強烈なのだが、湿気が無いせいかけっこうすごしやすい。日陰に入れば涼しいぐらいだ。

　テヘランを歩いた時にも気が付いたのだが、イランの道端にはところどころ水飲み場がある。大きなタンクに蛇口が付いていてコップがヒモでぶら下がってる。道行く人がそのコップや自前のマイコップでおいしそうに飲んでいた。

　朝早くだから気が付いたのだが、道路のそこかしこに大きな氷が置いてあって町の人が（タンクが置いてある前の家の人？）その氷を砕いてタンクに入れていた。地べたに置いてあるから砂とかが付いているはずだが、あんまり気にしてないようだ。・・・ちょっと飲んでみよう。とあるガイドブックにはこの水に関して、

『硬水でカルシウムやマグネシウムが多く含まれており、人によっては下痢を起こしやすいが、ま、長期旅行者なら大丈夫でしょう』

　と言う、あまり根拠が良く分からない様な説明をしていた。

「ゴクゴク」・・・う、うまい！冷たい！こりゃいいや！変なにおいも全くないし、ミネラルウオーターと変わらないおいしさだ！

　この日以来道端の冷水器をゴックゴク飲むが、下痢は一切しなかった（明らかに飲み過ぎの時以外は）。暑い暑いイランで冷たい水の心配が一切不要、と言うのは非常に心強いものであった。沙漠の国であるイランは、水に対する愛着が人一倍強いのかもしれない。イランの公園はほぼ全てが水をふんだんに使っているが（噴水や池や川や）、それも水に対する愛着の現れなのかもしれない。

　カーシャンのパン屋さん。外からのぞいてたら「ジャポン、入れ！」と入れてくれて、やっぱりチャイをご馳走してくれた。

　朝飯がまだだから焼きたてのナンもご馳走してくれると嬉しいなー、と言う思いが通じたのか私が欲しそうな顔してたからなのか、焼きたてのナンが私の前にやってきた（しかもチーズ付き）。

　うまい！焼きたてはパリパリして柔らかくて腹も減ってたからメチャクチャうまい！パン屋のジーちゃんが私の横に来て一緒に食べだして、それ食えチャイ飲め写真取れオシン！ハネコ！その他わけ分からんペルシャ語でやかましい事やかましい事。でも、愛嬌たっぷりでおっもしろいジーさんだった。

　次は「当店自慢のゴマ入りナン」と言うのまで出してきた。が、が、これがメーチャクチャうまい！！ゴマの香りが香ばしくって香ばしくってうまくって、あぁっとゆう間に食ってしまった。後にも先にもゴマ入りナンが食えたのはここだけだった。

　その他にも道行く先々でチャイのご馳走にあった。この町の人達はなんて優しい人ばかりなんだろう（後日、それはイラン中の人に言える事が判明するのだが）。

　さて、つぎはフィン庭園に行こう。カーシャンはそんなに見る所が無い様なので、ガイドブックにあった「せっかくカーシャンまで来たのならここに行きましょう」の言葉につられて目指すことにした。ちょっと遠そうだけど歩いていこう。

　真っ昼間のイランはつらい。影がどこにも無いので死にそうだ。バス使えばよかったかな。・・・前からいやーな連中が歩いてくるな。１６，７の、いかにもな悪ガキだ。

「オーシィーーン」ニヤニヤ

　下から舐める様な、いやーな言い方だ。ムカムカムカ。ケッ！ここにもあんな連中がいるのか！ムカムカムカムカ。

「ジャポーン、オシーン」ニコニコ

　あ、今度はいいイラン人だ。いけないいけない、顔を元に戻さなくっちゃ。・・・なかなか元に戻んないよー。

　俺のムカムカが気が付かないのか、普通に話しかけてきた（ホッ）。この子らは学生なのか少しだけ英語が通じる様だ。私が歩いてフィンまで行く事を言うと「何でー、遠いよー、バス使えー」と手を引っぱってバス停まで連れてきて、又々切符までくれた。・・・何でお前らそんなに優しいんだよー。イラン人は良い奴と嫌な奴の差が激しすぎるぞー！良い奴の方が圧倒的に多いけど。

　フィン庭園に着くが、中に入るのが有料だ。「何で公園に入るのに金が要るんだ？」入り口でゴネるが、圧倒的に私の言う事がおかしいので、すなおに（どこが？）お金を払って中に入る。

　中は見学すると言うよりは、ひたすらのーーーんびりする所みたいだ。木々がたくさんあって、小川のような水路からサラサラと水が流れる音がして、木陰は涼しくて、至る所でたくさんの人が昼寝していた。もちろん私も昼寝した。けっこう熟睡したんじゃないだろうか、目を覚ますと斜め向いのベンチに座ってた家族がニコニコ笑って手を振っている。私も手を振るが、でかいイビキかいてた様な気がする。・・・ハズカシイ。

　庭園の手前の公園（原っぱかな）でブドウをもいでくれた人達。

　取れたてのブドウを何房も頂いた。その前にピクニックに来てた家族からご飯をお呼ばれしたので食い切れない。

　宿に持って帰って後で食べよう。

　バザール内にあるケバブ屋さん。マトン肉のミンチをナンに巻いて食べるのだが、なかなかうまい。

　本当は持ち帰り専用の店みたいだったが、向いの絨毯屋さんの高級絨毯（だと思う）の束に座らせてもらって頂いた。絨毯屋さんにチャイまで出してもらって、嬉しい嬉しい。

　良く考えたら、この町に来て初めて自分で買った食べ物だった。

　すごくカワイイモスクでしょ。横で挨拶しているおじさんもカワイイ。

　朝の散歩で見つけたんだが（しっかりガイドブックにも載っていた）誰もいない内に入ったら「チケットは別にいいよ」と言われた上、チャイまでご馳走してもらった。

　モスクの前にイスを持ってきてボーっと座っているのが気持ちいい。前を見るとカワイイモスク、上を見るとペルシアンブルーの空に鳥が羽ばたいている（朝日の加減で鳥が輝いている様に見える）。

　写真のおじさんが庭にはえている木からイチジクをもいで持ってきてくれた。それもイッパイ。イチジクを食べるのなんて久しぶりだ。子供の頃近所の人の庭にイチジクが生えていて、勝手に食べていたのを思い出す。

　うまい！イチジクってこんなにうまかったんだ！宿に持って帰ろうと思ったが、その場で全部食べてしまった（下痢しなけりゃいいが）。

　うーーん、カーシャンは良い町だ。来てよかったな。