ホテルのスミっこで大宴会が始まっているのだが、なぜか明かりが無く薄暗い。どうもメンバーは女性ばかりの様だ。かろうじてそれだけは分かるのだが、なんで明るい所でやらないんだ？

　怪しいオヤジは説明もそこそこに、さっさと荷物を部屋に入れ、宴会に参加しろとゆう。な、なんか参加するには相当にテンションを上げなきゃいけない様な雰囲気なんだが、クタクタヘロヘロの脳味噌溶けた状態で大丈夫だろうか？

　・・・オドオドと参加したとたんに、大歓迎を受けてしまった！「オシンタナコラン名前は何だ」の波状攻撃だ！もーのすごいバイタリティ爆発の港町オバチャン軍団だ！あ、お姉ちゃんも混じってる。でも、暗くて顔が良く分かんないぞ。

　いきなり料理を出してきて食え食えとか言われたが、真っ暗で何出されたか分かんないじゃないか、まるで闇鍋状態だ。

　・・・「カプ」わっ冷たい！何だ果物か。なんで果物食っただけで爆笑されなきゃなんないんだ？ん？今度はこれ食うのか？

　・・・「カプ」うわっ！熱っちー！なんだ煮物か？熱いじゃないかっ、でもウマイぞ。あ、ウマイウマイ、みんなウマイ！！相変わらず暗くて何食ってるのか分からないが、とにかくウマイ！！やっぱりイランの家庭料理はウマイんだ。食堂のメシなんかより数倍ウマイ。

　そして、この人達もみんな底抜けに明るくて楽しいオバチャン達だ。どこの国でも港町の雰囲気は同じなのだろうか？最高にあったかくて気持ちいい人達だ。私がウマそうに食ってるのを見てすごく喜んでくれている。いやー私だって嬉しいよ。嬉しくて美味しくて嬉しくて腹いっぱいになってきた。

　ありゃりゃ、オバチャン達が踊りだしたぞ！バケツ裏返してドラムにして歌って踊って、あ、あっとうされてしまう。本当にここはイランだろうか、まるでラテンのノリだ！

　ああっ！！チャドル脱ぎ捨てちゃった！ビックリした！！下はＴシャツだ！！Ｔシャツで踊りだしたよ、だ、大丈夫か？イランで女性の肌を見たのは初めてだった。暗くて良く見えなかったけど。

　あ、・・・それで暗いのか？たとえ外の方から見ても、この場所は遠くて暗くてあまりよく見えないだろう。だからワザワザこんな場所で宴会してるのだろうか？

　私も引っぱられて踊らされたしまった。いつの間にか「タケシサンバ」みたいな歌になっているし。・・・もーーー、ヤケクソだ！踊ってやらーー！！受けてるのか笑われてるのか定かではないが、とりあえず喜ばれてるみたいだな。

　お開きの少し前に、おばあちゃんに「イランっていい所だよねー」と言ったら、

「なにがいいもんかねー、こんな物つけなきゃダメなのに」

　と、チャドルを引っぱって言ってたのが印象的だった。

　ここアンザリーは、イランでもリゾート地になっているそうで、ホテルの客もほとんど家族連れの行楽客だ（ご飯には困らないな）。

　３時には、ホテルのオーナーの息子（１８才）にスイカご馳走になった。泳いで疲れて暑い時に、冷えたスイカほどウマイ物は無いっ！！オーナーはどーもうさん臭いが（魚ケバブ買わそうとしたり、缶詰めの闇キャビア売ろうとしたり）この息子はいいヤツだ。ヤンチャ坊主の好青年って感じかな。精神年齢が近いのか、ミョーに気が合う。

　この息子やその友達と遊んだり泊り客と遊んだり泳いだりボッケーっとしたりご馳走してもらったり、快適な日々を過ごして幸せだった。決してキレイなお姉ちゃんが泳ぐのを見計らって海に入ったりなんかしちゃったりはしていない！

　この後、イスファハンに戻って皆既日食を見る予定だが、いい休養になった。ここは移動がキツイから行こうかどうか迷ったのだが、来てよかったよー。体中の毛穴全開にしてリラックスできた。

　夜、ノドが渇いたので事務所にザムザムコーラ買いに行った（事務所の冷蔵庫に冷やしてあって、原価で売ってくれるのだ）。したら、息子が一人で夜食作って食ってやがんの。なに？オレも食えってか？言われなくってもモチロン食わしてもらいますがな。豆か何かの煮っ転がしかな。おっ、ウマイじゃないか、おめー、なかなかいい腕してんぞ。

　ふっふっふ、しかし、やっぱりマダ若造だな。お客を優先して食わせるって事を知らねーな。他の人達は、自分たちはさて置いて、まず私に食べさそうとしてくれる。ヒジョーに嬉しいんだが、正直、少し気を使ってしまう。

　ところが、この若造は違った！私の食べっぷりを見て『危ないっ！』と思ったのだろう。急に食べるピッチを上げやがった。こーなったら、全然遠慮しなくてすむぞ！ふたりで先を争うように食べて、ああっとゆう間に食べ終わってしまった。最後の１口をヤツに残してやったのは、やっぱり大人だな。全部食べ終わってお互い顔をみてニコニコ笑ってる。

　出る時に、ザムザムコーラのお金だけ渡そうとしたら、言われてしまった。

「なにやってんだよ、タダに決まってるだろ。だって、友達じゃないか」

　・・・あ゛ああーーーもうっ！ほんとにもうっ！！何でお前らはそんなにいいヤツなんだよおっ！！たまんないよおっ、もうっ！！

　やっぱりイランはいいトコだ、大好きだよ！たまにいる悪ガキなんかヘでもねーやっ！大好きだぞーー！！

「なぜその町が好きなのですか？なぜその国が好きなのですか？」と聞かれた時に、「好きな人がいるから！」と答えたい。好きな町をもっとふやしたい。好きな国をもっとふやしたい。