さて、イスファハンへ移動しました。帰ってきたぞイスファハン！いよいよ明後日は皆既日食だ！今は朝の５時半だ！ホテルへ行こう！チャンと泊まれるだろうか？宿の連中、私の事覚えてるかな？目標のホテルの玄関では、早朝とゆうのに数人の日本人や外人が座っていた。

「部屋、とれないんですか？」

「ええ、部屋はないんですが、ノープロブレムだから待ってろって言われたんですよ」

「あーきっと屋上に泊まらせるんじゃないですか」

「屋上ですかぁ？」

　あ、宿のアンチャンだ「おーい、泊めて」

「オーウエルカムッ、ノープロブレム」

　本当かぁ？でも私のこと覚えててくれたんだ、ありがとー。疲れてるから庭で休ませてね。

　庭に出たらビックリしてしまった、朝だとゆうのに人があふれてる。日本人も何人か居た。話を聞くと屋上だけじゃなく地下室まで開放して入れられるだけ詰込む方針だそうだ。・・・うーーん、どーなることやら。屋上なら文句は言わないが、地下室は嫌だぞ。

　私が庭で休んでる間にも、続々と人がやってきた。なんか、難民キャンプの様相を呈してきた。それにしても日本人が多い。イスファハン中の日本人が集結してるんじゃあないだろうか。と、ゆうか、日食時期のこの期に及んで、予約無しで泊まれる様なホテルはココだけなんだろうな。

　そして、嬉しくなるような色々な日本人がいる。インド方面からやって来てトルコへ抜ける人、逆にトルコからやって来た人、中央アジアから来た人、私と同じく日食観測のために来た人、すぐ輪に入ってくる人や遠くの方で一人でいる人、男性女性、若いのから中年まで色々だ。こんだけ日本人がいるのに嫌な奴が一人もいなかった。これはスゴイ事だ！

　そんな人達の面白い話しやバカバカしい話や興味深い話しを聞いてるだけで、時間はああっとゆう間に過ぎていく。

　話しの中で、『呼ばれる』とゆう事が話題になった。せっかくイスファハンに来たってゆうのに日食を見ずに昨日帰った人達がいるらしい（なんてもったいない！）。そーゆー人達は『呼ばれてない』人なんだと。そして、何も知らなくてここへ来て、初めて日食の事を知った人もいる。運が良い悪いとか偶然とかじゃなく、『呼ばれて』いるから、と。

　呼ばれてない人はスグ近くにいても分からないが、呼ばれてる人はどんなに遠くてもそこにやって来ると。行きたい国に色々苦労しも行けない時は、それは呼ばれてないから。呼ばれる時期が来れば自然と行ける様になるものだと。

　いつだったか、『起る出来事は全て必然である』とゆうのを聞いた事がある。色んな出来事や出会いについて、全て『偶然』の一言で片づけちゃあ、何にも残らないし進歩もない。そこに必然を見つけ、意味を見いだす事によって世界が広がったり新しい道が見つかったり仲間が増えるのだと。・・・『呼ばれる』と一緒だな。そーゆー意味では私もイランに呼ばれたのだろう。

　んな事を喋ってるうちにドンドン時間は経っていく。さっ、みんなと一緒にメシでも食いに行こう！大勢で食うメシはウマイぜ！

　２度目のイスファハンで私は初めて水タバコを体験した。巨大なフラスコ（の様な物）に水を入れて、２本管を通し、炭火でタバコを焼いて吸うのだが（水がフィルター代わりになるのだが、分かってもらえますか？）、イランの人はこれを実にうまそうに、時間をかけて吸っている。

　元々タバコは吸わないし、吸ってもスグむせるので水タバコも敬遠してたのだが、でも、一口吸ってメッチャ気に入ってしまった。ウマイのだ！肺の奥深く吸い込んでも全然むせない（思いっきり吸わないと燃えてくれないのだ）。普通のタバコとは味が全然違うんだ。なんてこった、こんなにウマイんならもっと早くから吸ってりゃ良かった。この日より、遅まきながら連日水タバコを吸うことになる。ほんとにウマイんだ、これが（ノーマル味からフルーツ味など、色々ある）。

　そして、ある日本人旅行者に『正しい水タバコの吸い方』とゆうのを教えてもらった。

「水タバコを吸う時はね、ものすごく贅沢な気分で吸うんですよ。吸ってる間は思いっきりリラックスして、この時間は永遠に続く。と思うんです、思い込むんです。永遠に続く時間をタップリゆっくり味わって楽しむんです。で、終わったら、『なんだ、終わっちゃたのか』で、いいんです」

　うーーん、奥の深い言葉だなー。永遠の時間を味わうのかー。なんか、色んな事にも言えそうな言葉だなー。

　この人は私と同い年で、今アメリカの大学に留学中なんだそうだ。おースゴイ！ハッキリ言ってうらやましい。４０からでも色んな事が始められるんだ。・・・そーだよなー、うらやましがってばっかりじゃダメなんだなー。この出会いだって必然なんだし。

　町を歩くと色んな人が私を覚えてくれていた。ほんとにもー、嬉しいったりゃありゃしない。相変わらずチャイおごってくれたりご馳走してくれたり。幸せな日が続く。そして、イスファハンに戻ってきて来て、私の中に少し変化があった。

　悪ガキに会っても、前ほど頭に来なくなってきたのだ！

　なにか、軽くいなせる様になってきた。なぜだ？どーしてだろう？色んな日本人に会って色んな話しをして、気持ちがお腹イッパイになってきたのだろうか。優しいイラン人に再会して私も優しい気持ちになってきたのだろうか？悪ガキに慣れてきたのか？それとも、このイスファハンとゆう土地のせいだろうか？良く分からない。ひょとしたらその全部かも知れない。・・・良く分からないが、こりゃあ良いことだ。

　まー、一癖も二癖もありそうな日本人達。

　まだまだ沢山の人達がいる！

　ある日、散歩から帰って庭に出ると、テーブルにお菓子やら果物やらがイッパイ並んでた。旅行者の一人がみんなの為に買ってきてくれたのだ。な、なんて気前がいいんだ！この人はその後も色んな物を差し入れては、テーブルに並べてみんなに勧めてた。こんな気配りのいいバックパッカーは初めてだ。

　その日より、私も食堂で食い残したナンをテーブルに出したのだが（ナンは食べ放題なのだ）あんまり食べてくれる人がいない（果物と食い残しのナンじゃあ違うだろっ）。

　まったく、色んな人がいるもんだ。