今日は皆既日食の日だ！この旅行のメインイベントだっ！！昨日は興奮してなかなか寝つけなかった。そのくせ今日は早くに目が覚めてしまった。大丈夫か？体調最悪だぞ。

　色々聞いてみたが、日食を見る場所はみんなマチマチだ。このホテルの屋上で見る人、タクシーでどっかへ行く人、イランの大学へ行って最高の機材と一緒に見る人。でも、やっぱりイマーム広場で見る人が一番多かった。私もそこで見る！もーダメだ、ワクワクドキドキして、落ち着かないったりゃありゃしない。皆既が始まるのは（真っ暗になるのが）４時過ぎだ、待ち遠しーよー。

　あ、先に断っときますが、日食の写真はありません！素人が片手間で撮って写せるほど甘くはなかった。失敗写真ばっかりだよー。

　さて、時間は飛んで午後４時、ホテルの日本人と連れ立ってイマーム広場へと向かった。広場は満員で立すいの余地もない程だと思ったが、そんな事はなく、意外と少なく感じた。これなら落ち着いて見れるだろう。

　某方から頂いたＸ線フィルムシートを使って（これが又、メチャクチャ良く見えるのだ！）太陽を見ると、か、欠けてるよー！まるで何かにカジられた様な太陽だ。まさに蝕だな。もーそれだけでドキドキしてしまった。スゲー！

　イラン人の青年が、大きな鏡を持って来て三日月型の太陽を壁やモスクに反射させていた。大きな三日月太陽が映し出されて、なかなかいいアイデアだ。

「テクノロジーじゃなくて発想が大事なのさっ」と言っていたが、確かにそのとうりだ！おみそれしました！

　部分日食中のお祈り。

　噂ではイマーム広場のイラン人全員がお祈りする。と言われてたが、そんな事は無く、お祈りしてるのはゴク一部の人だけだった。

　それでも、非常におごそかでした。

　嬉しくなってアッチコッチうろつくうちに、みんなとはぐれてしまった。ど、どーしよー。もうすぐ皆既の時間だ、こんな大イベントを一人で見るのなんか嫌だよー、近所に誰かいて、ワイワイやりたいよー、感動を共有できないじゃないか！

　ちょっと引きつりながら仲間を探す。どこいっちゃたんだよー（かなり焦ってます）。

　ああっ！あんた達はっ！！なんとバムの宿で一緒だったバルセロナの人達だ！そーかー、彼らも日食見るって言ってたもんなー！よかったよー、お願いだから一緒に見よう！！

　彼らも再会を喜んでくれて、一緒に見ようと言ってくれた。よかったー、太陽を見ると、だいぶ細くなってきた。もうすぐだ、もうすぐ皆既だ。

　おいおいおい、イラン人！何俺達の顔なんか見てんだよー！そんな場合じゃないだろ！太陽見ろよ太陽！もーすぐ皆既が始まるんだぞっ！分かってんのかぁ？

　緊張感の無いイラン人にオチョクられてたら、なんか涼しくなってきた。太陽が欠けてきたからだろうか？すごい、さっきまであんなに暑かったのに。

　な、な、なんか、チョット変だぞ、さっきまでも周りの景色が少し不思議な感じだったが、今は明らかに違う！何だろう？夕焼け時のようで、でも色が少し違う。太陽だって上の方にあるし、あっ、目で見える！！太陽が肉眼で見える！スゴイ！

　何だ何だ何だ！暗くなるスピードが加速度的に速くなっていく！何だ？ゾゾゾって感じで体中の毛穴が開いていく様だ！何だ何だ何だこれは何だ！！

　えっ、なぜ？何でこんな時にこれが来るの？覚えのある感覚が私にやって来たその直後！！！

　ああっ、ダイヤモンドリングだ！あーーー終わっちゃったよー。あっとゆう間だった、１分チョットだ。

　なんか、終わったらどっと疲れてしまった。そこらにヘタり込みたいぐらいヘトヘトになってしまった。

　あーゆー体験を共有したんだ。バルセロナ兄ちゃん達とはもう他人じゃないみたいだ。

「バルセロナに来る時は絶対に電話しろ！宿とメシの心配はいらないからな！」と、言ってくれた。

　バルセロナのヒゲ兄ちゃん達と一緒にカシャリ。

　バルセロナにも行かなきゃいけないな、こりゃ。

　スゴイスゴイスゴイ、宿に帰っても日食の話しで持ち切りだ！でも、なかなか言葉じゃ表現できない、みんなが「あーでもないこーでもない」と言い合って、テンヤワンヤだ。

　そんな中で、１つだけ一致する意見があった。

「映像で見るのと実際に体験するのとでは絶対に別物だ。いくら口で説明しても、見てない人にはこの感動は伝わらないだろう」と。

　そして、その逆に私が何度説明しても分かってくれない事があった。それは、皆既直前の、あの不思議な浮遊感覚だ。うーん、誰か分かってくれないかなー。なんて言えばいいかなー。えーと、うーんと、んーと。

「あ、あのね、幻覚キノコって食べたことある？あの時の感覚とほとんど同じのがやって来たんだけど。」

「あっ、分かる分かる、私もそーだった」

　おーーー、仲間がいた！やっぱりオレだけじゃなかったんだ。たった１人だけだけど、話しを聞くと私と全く同じ状態だった。その人もキノコを食べたことがあって、同じ様に思ってたそうだ。

　そしてその人も、皆既終了直後に強烈な疲労感が来たそうで、本当にその場にヘタり込んでしまったそうだ。あー、じゃあ私の時の疲労感も、体調が悪いせいではなかったんだ。皆既日食は、何かしら人体に影響があるのだ。肉体的な事かも知れないし、精神的な事かも知れないし。

　これは、次回も行って確かめるしかないか？次回は再来年のアフリカだそうだ。行くっきゃないか？マニアの間では、これを日食病に感染した、と言うらしい（完全に感染してるな）。ほかにも感染してしまった患者がイッパイいた。

　日食を見終わって、三々五々ホテルを後にして行く人達。日本に帰る人達がいる、トルコや中央アジアへ旅立っていく人達、ペルセポリスでペルセウス流星群を見に行く人達（うらやましいっ！時間があったらゼヒ行きたかった）、私も日本へ帰るのだ。長い私の旅行も終わってしまった。