ピイに着いた頃は満身創痍だった。ホントに狭いんだよ、座席が。ヒザを小さく曲げても前の座席に当たってだんだんシビレてくるんだ。足伸ばすなんてとてもじゃないが無理だった。

　バス停の所でしばらくヘタってたら、サイクル力車のアンちゃんが声をかけてきた。「町まで乗らないか？」と。町まではそんな距離じゃないと思うんだが（たぶん）とてもじゃないが歩く元気はない。ここは素直に力車に乗ろう。

　サイクル力車って言うと、たいてい自転車の後ろに座席乗っけたインド方式か、自転車の前に座席乗っけたベトナム方式がほとんどなんだけど、ここのは自転車の横っちょに座席乗っけたサイドカー方式だ。その名も『サイカー』とゆうらしい。

　そのサイカーに乗って町まで行ってもらった。これ、なかなか乗り心地がいいのだ。周りの景色も良く見えるしさ。

　んで、ピイだけど、いい！何かいいぞ！適度にイナカで人もやっぱりニコニコしていて、なんか、長居しそうな予感がする。

　木陰で休んでるサイカーのアンちゃん達。

　ミャンマーはとにかく熱いのだ。40度こえる日がほとんどじゃないだろうか。昼間は木陰で休んでなきゃやってられない。

　んで、私が木陰で休んでると、どこからともなく人が集まってくる。珍しい動物でも見るように遠巻きにして。

　こっちから手を振るとニッコニコして返してくれるんだな。嬉しいったりゃありゃしない。

　ピイの宿は3ドルのゲストハウスにした。ミャンマーはけっこう宿代が高いのだ。この宿が3ドルで一番安かった。

　しかし！ミャンマーの宿の特徴として、朝飯が付いているのだ！！これは嬉しい！またここの宿のメシがウマイのだ。トーストとオムレツにキョーレツにうまい果物が付いている！！日によってマンゴーだったりバナナだったりバナナとマンゴーだったり、とにかくウマイ。しかも、初日の朝飯の時、宿の家族の人達が食べているミャンマーラーメンを物欲しそうに見てたら、「お前も食うか？」と言われてしまった（断るわけないじゃないか！）。それ以降毎朝ラーメンも食わせてもらって、嬉しいったりゃありゃしないんだな。

　それから、ここピイには、激安生ビールがあるのだ！！！！！

　普通のビールはケッコウ高いのだが、ここの生ビール屋さん（ミャンマーでは有名なチェーン店らしい）は、日本で言うところの中ジョッキと小ジョッキの中間ぐらいなのだが、ケッコウ冷えててしかもウマイのが、たったの95チャットだ！30円ちょっとだよ、30円！もーーーー、嬉しい嬉しい嬉しい。

　このジョッキ、クィーーーっと飲むのにちょうどいい大きさなのだ。なもんで、朝に１パイ引っかけていい気分で散歩して、夕方には２ハイゆっくり飲んですごしてしまった。毎日毎日通うもんだから店の人に顔覚えられてしまったよ。でも嬉しいんだな。

　そして、メッチャ気に入った食い物があった。50チャットのメンなんだけど、うまいんだこれが。トロリのスープにケッコウ腰のあるメンで、具に『おふ』を揚げたようなのが入ってる。この『揚げふ』が良くスープを吸ってモチモチしててうまいんだ。熱い日差しの中でこの熱いメンを食べて汗だくになるんだけれど、なぜかすごくうまいんだ。このメンも毎日食ってしまった。

　また、屋台で売っている色んな小物の食いモンが安くてうまい。だいたい5チャットから10チャットで売っている。揚物の類いが多いんだけど、どれもウマイ！！イモの天ぷらやら野菜のてんぷらやら、そして、おモチの天ぷら！これがウマイ！！ミャンマーの食い物はマズイって噂だったけど、ドーしてドーして、やるじゃないか。屋台の食べ歩きだけでハラがフクれてしまう。

　いい人達と冷たいビールとウマイ食いモンに囲まれて、私しゃシヤワセな日々を過ごしていた。

　ピイには１つだけ見所があった（本当はピイの町自体が見所なんだけど）。ピイからピックアップトラックで1時間ぐらい行った所にメガネをかけた仏像があるそうなんだ。目の病気に御利益があるとか。で、出かけることにした。

　ピックアップトラックとは、小型トラックの荷台に長イスを据え付けてお客さんを乗せるのだが、その辺の道に行き先ごとにタムロしてるのだが、私が行った時にはすでに満員だった。どこに乗るんだ？ひょっとして屋根の上だろうか？

「おー日本人、ここに乗れここ」

「こ、ここ？この上に乗るの？（立つの？）」

　トラックてさー、荷物の出し入れする時に後ろのカベ（カベって言うのかな？）フタみたい所をパタンって倒すよね。そのパタンって倒したフタの上に乗れって言うんだ。

　ここに立つの？どっかにシガミつくの？フタ壊れたら、オレおっこっちゃうよ。しかもこのフタ木製だよ。ボロっちいよ。すき間から下見えるよ。

　私の心配をよそにトラックは出発してしまった。ほかのミャンマー人は余裕マンテンで乗っかってるけど私はけっこう必死で柱にシガミついていた。これなら屋根に上った方がよかったかもしれない。

　それがね、これね、慣れるうちにね、気持ち良くなってしまった。けっこう楽しいよ。風受けて涼しいし周りに立っているミャンマー人ともニコニコやり取りできるしさ。手ぇ伸ばして景色見たり余裕も出てきた。ピックアップトラック移動、癖になりそうだ。

　やっと着いたメガネ仏像。

　・・・どー見たってドラえもんののび太君だよねー。なんか、あまり有り難みがないぞ。こ、来なきゃよかったかもしれない。

　でも、この町の景色は気に入ってしまった。ピイよりもさらにイナカで散歩してて楽しいのだ。

　しかし熱い。とてつもなく熱い。ちょっと歩いただけで意識がモウロウとするぐらい熱い。この先ずっとこんな熱さが続くのだろうか？私、そのうち溶けてしまうんじゃないだろうか？