チェンマイ二日目、今日はトレッキングの日だ。昨日は昼間っからヨッパラッたのと寝不足で８時ぐらいに寝てしまった。ゲストハウスの一階でたむろしている泊まり客に（かなり怪しい連中だ）「グッナイ」とか言ったら「こんな早く寝るのか！」って大笑いされてしまった。

　トレッキングの間バックと貴重品は預かってもらえることになっていたんだが、バックはともかく貴重品は危ない。いまいち信用できないもんね。ぺっちゃんこのお腹の所でしばる貴重品入れ（正式名称は何て言うんだろう）にパスポートやら貴重品一式を入れ、バックだけ預かってもらった。

　一階の食堂でコーヒーなんか飲みながら出発を待っていると（出発時間がいまいちわかっていない）一緒に行くらしい欧米のアンちゃんが貴重品を預けていた。私と同じ様なぺっちゃんこの貴重品入れだ。あれは万国共通なんだろうか？貴重品預かり担当らしいおっちゃんが手続きしていたが、すごいで厳重だった。

　まず、貴重品袋を新聞紙で巻いてその上に預かり証の控えをのせる。それからすごい分厚いセロテープで（幅５ｃｍぐらい）ぐるぐる巻きにする。そりゃぁもう、とことんぐるぐる巻きにする。そして、はがしたらわかる様にテープの境目にサインをさせていた。

「うたぐって悪かった！ごめんなさい！ちゃんとやってるんだね！」

　あわててズボンの間から貴重品袋を引きずり出して預かってもう。おっちゃんがどうしたんだ急にってゆう顔をしていた。

　ところでこのゲストハウス、やたらスタッフが多い。さっきの貴重品担当？のおっちゃんに責任者らしき若いアンちゃん、食堂を任されてる若いおねえちゃん（かわいい）に、あばちゃんが２〜３人居る。それ以外にも用途不明のアンちゃんが３〜４人もごろごろしていた。一泊４００円でやっていけるのだろうか？大きなお世話だが、ちょっと気になる。

　その内の一人のアンちゃんは力が余っているのか、朝からサンドバックに蹴りを入れていた。さすがはタイ、メチャメチャシャープな蹴りだ。このアンちゃんにケンカを売るのだけはやめておこう。

　そうこうしている内にやっと迎えのトラックがやってきた。けっして乗用車やワゴンではない、トラックだ。トラックの荷台に座席と申し訳程度のホロがかかっていた。

　トラックの中には、すでに何人もお客さんが乗っていた。どうやらこのゲストハウスだけでなく、色んな所からお客を連れてきているらしい。ここが最後だろうか、私たちが乗り込むとトラックの荷台はほぼ満員になってしまった。

　荷台のなかには、国際色豊かな面々。

　まずは、日本人のエミちゃんと彼氏のローリー。この度、二人して仕事をやめて世界行脚の旅行中だそうだ。タイが最初の国で、これから半年か一年かけて色んな国を巡るとゆう。はっきり言ってうらやましい。私は一週間がせいいっぱいだもんな。仕事をやめれば何も問題ないんだが・・・。エミちゃんがサンダル履きの私を見て心配そうに言ってくれた。

「靴は無いんですか？ちゃんとした靴はいてく様に説明されませんでしたか？」

「そうなんですか？全然わからなかった」

　きっと宿のアンちゃんが一生懸命説明してくれてたんだろうが、ちっともわかっちゃいなかった。でも、わかっててもサンダルしか無いからいっしょだったけど・・・。

　次に、フランスから来た青年。私と同じく一人旅だ。名前は、・・・忘れてしまった。とりあえずピエール君、としておこう。このピエール君、英会話の能力が私と同じレベルだ。これはうれしい。欧米人＝英語ペラペラ、とは限らないらしい。しかし、彼は英語力を補うべく電卓型の翻訳機を持ってきていた。みんなめずらしがって頭よせて見ていたのだが、ゆれるトラックであんなもの見たんで車酔いしてしまったぞ、ピエール。

　私の向かいに座っているのは、アメリカの正統的な美男美女カップル。はぁ〜って感じで、ちょっと見とれてしまった。私の仕事がなんなのか聞いてきたので、ありったけの単語と身振り手振りで説明した。男性の方はうなずいてるが女性の方はハテナ、になっている。一応確認してみた。

「どぅーゆーあんだっすたんど？」

「ハイ、ワカリマス。私、二年ホド日本ニイマシタカラ」

　え、英語で喋ってたんですけどぉ。

　となりのオヤジはワシャわからんかったぞっ、てな顔をしている。最後のグループはこのオヤジと奥さんに妹の三人組だ。アイルランドからバケーションでやってきたらしい。私がアイリッシュ音楽が好きだ、と言ってるのにオヤジときたら「ん〜ん、音楽はいいねぇ〜」とか言って会話がぜんぜんかみ合わない。私の英語がだめなのか、オヤジがちゃんと聞いてないのか、きっと後者だろう。おやじと言ってもたぶん３０代後半だと思うんだが、なんか雰囲気が気のいいオヤジッてゆう感じだ。

　運転席の方には運転手にガイドが２人。３人で案内してくれるのかと思ったら、運転手は我々を目的地まで連れてきたらそのまま帰ってしまった。なるほど、２人のガイドで前と後ろをサポートするんだな。

　トラックから降りたらガイドの一人がこっちに寄って来た。私の足もと見つめて、

「靴はいた方がいいよ。無かったらせめて靴下だけでもはかないと、足すりむいちゃうよ」

「ありゃ、日本人だったんですか。てっきりガイドの人かと思ってました」

　だってこの人、どっから見ても現地の人にしか見えないんだもの。

　彼はフクちゃんと言って、小笠原の父島で天然塩を仲間と一緒に作ってるそうだ。今はちょっと休んで旅行中。タイの次にはネパールへ行くと言っていた。後に小笠原へ行った時、会いに行ったんだが（父島は出張で何度か行っていた）タイと変わらないような山の中に手作りの塩製作所を作って、まるで仙人のような生活をしていた。

　さて、やっとトレッキングツアーのメンバーも勢ぞろいして、いよいよ出発です。かなり個性的なメンバーでどんなツアーになるのやら。