いやぁー、たっぷり寝ました。足伸ばせて寝れるってゆうのはこんなに幸せだったのね。便所の中にあるドラム缶の水で顔洗って、さあ、メシ食いに行こう！そして、メシ食ったらシャワーだ！

　宿にはシャワーは無いけど、アリの町にはシャワー屋さんがあるのだ！

　シャワー屋さん、その名のとおりシャワーを浴びさせてくれるお店だ。日本のお風呂屋さんみたいなもんだね。何日もシャワー浴びてないので体が気持ち悪いのだ。バスん中もホコリだらけだったんで、当然私もホコリだらけなのだ。

　メシ食った後、ビニール袋に着替えと洗濯物入れてシャワー屋さんに直行（石鹸とタオルはシャワー屋さんでもらえる）。ちなみに、シャワー屋さんの中で洗濯していいのかどうかよく知らないが、まあ気にしないのだ。

　シャワー屋さんは町の大通のほぼど真ん中にある。けっこうキレイなのだ。そして、シャワーがちゃんと熱い！しかもドッバドバ出るよ！き、気持ちいいのだ！！ちゃんとお湯が出るか心配だったんだけど、これなら文句ない！体もキレイになったし洗濯物もキレイになった。もう、満足なのだ。

　シャワーを浴びた後、お店のロビーでしばらくくつろぐ。お茶も出してくれるしDVDも見れる（チベットを舞台にしたカラオケ）。店の人も親切でなかなかいいねー。

　親切と言えば、バスの中にいたお客さん達もみんな親切だった。

　自分で言うのもなんだが、バスの中では私が一番辛い状態だったと思う。そうゆうこともあるんだろうが、バスの乗客がみんな優しくしてくれるのだ。やれ、これ食えあれ食えこれ飲めと、食い物や食料をイッパイいただいた。だんだんと物価が高くなっていった西チベットだが、飲み食いに困ることはあまりなかった。

　さぁて、ソファに寝そべって思い出に浸ってニタニタしてる場合じゃない！行動を起こすぞ、なんたってカイラスはすぐそこだ！！それにアリの町ってね、あんまり魅力がないのだ。そこそこ大きな町なんだけど、何か見る所があるって感じの町でもない。しかも雨が多いのだ！さっさとカイラスのふもとの村、タルチェンに行こう！

　タルチェンへ行く方法は二つある。公共バスで楽して行く方法とヒッチハイクでいく方法だ。公共バスなら260元。ヒッチの相場が100元。悩む必要なんかどこにもないね、ヒッチハイクに決定。2〜3日アリで休んだ後（だって疲れてたんだもん）、タルチェンへ向けて出発だ。

　ほんでね、チェックアウトの時に驚いたんだけど、宿のおばちゃんがすんごいいい笑顔で送ってくれたのだ。なんで驚いたかったゆうと、このおばちゃん、愛想がメチャメチャ悪かったのだ。いっつも怒鳴ってたんだぞ。私もバスでの教訓があったから遠慮せずに日本語で怒鳴り返していたのだ。それが良かったのか、たまぁに機嫌がいい時にお茶ご馳走してくれることもあった。しかし見送ってくれた時のような素晴らしい笑顔は無かったぞ。

　うーん、中国人はよく分からない。

　タルチェンへ行くトラックをヒッチするポイントは、町外れにあるバス停の手前にあるガソリンスタンド。誰に聞いたか忘れちゃったけど、毎日その場所で旅行者が大勢集まってヒッチハイクしてるそうだ。

　で、その日も何人もの旅行者がいると思ってたんだけど、待っていたのドイツ人のおっちゃん（年齢不詳）一人だけだった。

「あのー、タルチェンに行きたいんですけど、ヒッチポイントはここでいいんですか？」

「おー、私もタルチェンに行くんだよ。ヒッチポイントはここでいいよ。でもねぇ、今日はトラックが全然つかまらないんだよ」

　あーそうなんだ。ここなんだー。でもトラックがつかまらないんだー。

　ぼけーとしてる場合ではなかった。私も一緒になって待ってたんだけど、全然つかまらないのだ。トラックや車は何台か来るんだけど、タルチェンへ行く車は1台も見つからなかった。

「おーい、乗らないのかー。タルチェンに行くんだぞー」

　また来たよ。タルチェン行きのバスだ。なんか知らないけど何回もここに来て私達を誘うのだ。バス停での客引きってのは知ってるけど、ヒッチポイントまでやって来て客引きするバスなんて初めてだよ。でもなーいつまで待ってもヒッチ出来ないからなー。

「あのー、あのバスですけど、乗りませんか？いつまで待っても車来ないし」

「乗らないよ。だってあのバス260元もするんだろ。私ならいつまでも待つよ。今日来なかったら明日もう一度待つ」

　うーん根性入ったおっちゃんだ。これもドイツ人気質なんだろうか。そして、根性のない日本人はバスに乗ることにした。おっちゃんは「いいのか？260元もするんだぞ。ヒッチなら100元で行けるんだぞ」と言っていた。

　ごめんなさーい。私根性ないんだよー。

　とゆうことでバスに乗って出発だ！そして、バスが進むと景色がメッチャクチャいい！！最初の方はねぇ、大平原なのだ。しかも向こうの方に雪山が見える。いやーー気持ちいい！道路もすごく快適な道路だった。アリに来るまでがひどい道だったので覚悟してたのだが、メチャクチャきれいな舗装道路だった。これなら楽勝じゃん。

　と思ったら甘かった。舗装快適道路は最初だけだった。途中からはやっぱりデコボコ道だ。とゆうか、道は無いのだ。大平原のど真ん中を突っ走ってるよ。これはこれで気持ちいい。

　その大平原のど真ん中にガソリンスタンドがあった。ガソリンスタンドとゆうか、家？ドラム缶に入れたガソリンが家の前に何本も転がっている。すごいよ、こんな何にもない場所にポツンとあるんだ。

　そのガソリンスタンドの前の景色。

　こんな所にもちゃんとマニ車があるのだ。

　このガソリンスタンドの看板娘。

　いやカワイイのだ。

　ガソリンスタンドをこえると、だんだんと景色が変わってきた。雪山が増えてきたのだが、その雪山の模様がちょっと普通と違うのだ。そう、カイラスっぽい模様なのだ！

　カイラスも雪山なのだが、その側面には横縞の模様が入っている。そして、前の方にイッパイ見える雪山にも横縞の模様が見える。ってことは、カイラスはすぐ近く？でも、どれも同じように見えるのでどれがカイラスだか分かんないよ。そばにいる人に「あれがカイラス？」って聞いたけどどれも違うらしい。

「おい、あれがカイラスだよ」

　なんですとぉおおおおお！！あ、本当だ！カイラスだ！！本で見慣れた写真とは方角が違うからちょっと違うけど、きっとあれがカイラスだろう！（でもちょっと不安）

　そしてカイラスのはるか右側に小さな集落が見える。きっとあれがタルチェンだな。

　だけど、ちょっと遠すぎやしないか、カイラスとタルチェンの距離が。10Kmぐらいあるぞ。それに、その間には小さな山々がある。あの山越えて10Kmぐらい歩かなきゃカイラスにはたどり着けないのか？私に歩けるだろうか？ものすごく不安だ。

　さて、とゆうことでタルチェンに到着だ！

　タルチェンの村（とゆうか集落？）メチャクチャしんどいです。ちょっと歩いただけで息がはぁはぁする。頭もちょっと痛いぞ。ここ、標高が4,700mぐらいある。さすがにキツイ。こんなんでコルラ出来るだろうか？とてつもなく不安だ。

　不安がってても仕方ない。宿を探そう。まず有名な宿に行ったのだが、高い！値段忘れちゃったけど高くて泊まれない。しかもその宿は水さえ出ない。とゆうかタルチェンに水の出る宿はない！（多分）

　重い荷物担いで息はぁはぁ頭キンキンだったので、おもわずそのバカ高い宿に泊まろうと思ったのだが、幸か不幸か満員で泊まれなかった。ものすごくゆっくり歩いて近くにあった駄菓子屋のおばちゃんに安い宿の場所を聞く。

「うち、宿もやってるよ。」

　うっひゃーー、泊めて泊めて。もう歩けないよ。

　宿はお店の隣にあった。確か15元か20元だった（少し値切った）。建物はとりあえずちゃんとしてるが、床は無い。土の地べたがむき出しだった。地べたの上にベッドが四つある。お客さんは私だけだ。当然ながら電気も水道も何にも無い。この村にはシャワー屋さんもない。ま、なんとかなるだろう。安い宿が見つかっただけでもよかったよ。

　さて、宿も決まったし、タルチェンに着いて、まず最初にやることをやろう。警察に出頭するのだ！

　今まで罰金払わなくていいように警察に見つからないようにしてたのに、なぜここに来て警察に行くかってぇと、ここで警察に出頭すれば、普通は罰金500元払わなくちゃあいけないところを、たった50元で勘弁してくれるのだ。

「ここまで苦労してやってきたんだねぇ、ご苦労様」とゆうことで罰金をおまけしてくれるのだ。そしてアリ近辺の入域許可書もくれるのだ。いやー、中国政府も粋なことをするねぇ。どっちみちビザももうすぐ切れるから、許可書が無ければなんにも出来ないのだ。カイラスコルラが終わったらアリでビザの延長をするつもりだった（アリでならビザ延長が可能なのだ）。

　とゆうことでさっそく警察に出頭した。

「こんにちはぁー、アリから来ましたぁー。許可書は持ってませぇーん」

「あ、そう。じゃあ罰金350元払って」

「な、なんですとぉおおおお？！な、なんでやねん！50元でいいんとちゃうんか？！ここに来たら50元で勘弁してくれるって聞いてたんやでぇ！」

「そんなことは知らない。みんな350元払ってるんだ。君は払わないのか？追い返されたいのか？」

　そんなせっしょうなー。50元で良かったはずなのにぃー。しつこく係のおっちゃん（あ、警官か）に詰め寄ったけどダメだった。今まで払った人の書類とかも見せてもらったけど、みんな350元払っていた。仕方ないのかなー。きっと状況が変わったんだろうな。

　私はガイドブックを持ってきていたが、それは1998年出版のガイドブックだった。7年も前の本を使ってるのが悪かったのかなー。まあ、しゃあないか。

　タルチェン、寒いです。息はぁはぁで満足に歩けないです。頭は痛いわセキまで出てくるわ水が無くて顔は洗えないわ罰金払うわ、私、けっこうヘコんでます。さっさと寝よう。

　翌朝です。昨日はあんまり寝れなかった。2時間おきぐらいに目が覚めてしまった。呼吸がちゃんと出来なくて苦しい。夜中外にションベンしに行ったんだが、メッチャクチャ寒い！寒くて急いで戻ってベッドに飛び込んだらものすごく息苦しくて死にそうだった。こんなんで大丈夫だろうか？

　こりゃ軽い高山病だな、きっと。そうだ、松ちゃんから高山病の薬をもらってたんだ！あれ飲もう。

　高山病の薬を飲んでタルチェンの村を少し散歩する。じっとしてるより軽く歩いた方がいいだろう。

　だけど、正直言ってあんまり散歩が楽しくない。なかなか面白そうな村だとは思うんだけど、なぜかワクワク感が少ない。高山病のせいかなぁ？何でだろう？天気がいいのが救いだな。ちなみに、やっぱりココからカイラスはほとんど見えない。

　とりあえずコルラに向けて買い出しをやっといた。たいがいの物は売ってるんだが、残念ながら果物がない！失敗したー。果物だけでもアリで買っとけば良かったよ。

　もしこれからカイラスコルラしようと思ってる人！アリで果物イッパイ買い込んどいた方がいいぞー！果物は絶対必要だぞー！

　さて、明日はカイラスコルラに向おう。ここに長居しても疲れるばっかりのような気がする。早めに出発した方がいいだろう。荷物は宿に預けて最小限の物だけ持って行くことにした。

　明日になればカイラスが拝めるぞ！！