朝です。凍死もしなくて無事に目覚めた。そして近くの川で顔を洗う。

　気持ちいいー！なんか久々にキレイな水で顔を洗えた。水は冷たいけどメチャクチャ気持ちいい。歯も磨いてキレイに生まれ変わったところで出発。この先は特に峠があるわけじゃないから、のんびり歩くだけでタルチェンに帰れるはずだ。

　・・・お、面白くない。帰り道全然面白くない。なんか景色が殺伐としてるんだ。しかもカイラスも全然見えない。カイラスどころか雪山の一つも見れないよ。なんとゆうか淡々と歩いてるだけだ。これじゃあ修業みたいだよ。

　あ、コルラって修業の一つか。でも、私ゃ修業してるわけじゃないんだよな。なんか楽しみたいぞ。

　とか思ってたら五体投地してる兄ちゃんに会う。しかも急な下り坂で五体投地している。

　メンボク無い。異教徒と言えどもカイラス回らせてもらってるんだから、謙虚にならなきゃ。

　とはいえやっぱり退屈だ。ここに来て誰にも会わなくなってきたからよけいに退屈だ。こんな時にコルラ犬がいてくれたらなー。

　かなり、かなり歩いたところで洞窟があるってゆうお寺に到着。この近くにあるお店でカップラーメンを買って食べる。とてつもなく高いカップラーメンだったが背に腹は代えられない。食料買い出しの時にちゃんと考えて買っとかなきゃダメだよ。

　そして、このお寺をこえたあたりから景色が良くなってきた。荒涼とした緑のない山から、一気に緑が増えてきた。それに伴ってコルラするチベタンも一気に増えてきた！あ、みんな私を追い越してるだけなんだけど。

　良い景色を見ながら、追い越して行くチベタンと挨拶交わしながらドンドン進む。けっこう元気が出てきたよ。道端で休んでるとチベタンが寄ってきて一緒に休むのだ。言葉なんか通じないけどなんかいいのだ。ギターなんか弾いちゃったよ。喜んでくれたよ（多分）。

　ほんでね、チベタンの人達ったら、きっと大事な食料のはずなのに、私に干し肉や氷砂糖をくれるのだ。とてつもなくウマイのだ。腹減ってるから特にウマイのだ。干し肉なんかねぇ、メッチャ固いんだけど、噛めば噛むほど味が出てきてウマイのだ。

　中にはとてつもなくマズイのもあったけど（なんかねぇ、ヒモでつながってる食い物だった）心の中ではひきつりながらもニコニコ笑って食ったのだ。そしたらチベタンの人が喜んでもっと大きいのをくれたのだ。あ、いや、それは遠慮したい。遠慮とゆうか、ホントに食いたくないんです。・・・断りきれなかった。その人が先に行ってから、遠くの人が通らないトコまで行って吐き出してしまった。

　ゴメンナサイ！本当にゴメンナサイ！どうしても飲み込めなかったんです。

　そして、やっとこさタルチェンの村が見えてきた！まだまだ遠いけど、やっとこさタルチェンが見えてきた。あとちょっとだ。

　ほんでね、嬉しくて歩いてると、後ろから外人のおっちゃんがやって来た。かなり歩く速度が速いです。ほんで、見覚えのある顔だった。

　おぉー、アリで一緒にヒッチハイクしたドイツ人のおっちゃんじゃないか！おっちゃんも無事にこっちに来れたんだ。おっちゃんも私に気が付いたよ。

　ほんで話を聞いて驚いた。なんとこのおっちゃん、たった一日でコルラしたのだ！なんと出発したのが今日の朝なのだ。何者だこのオヤジ？あの道のりをたった一日で回ったのか？ってことはドルマ・ラ峠も今日越えたのか？何でこんなに元気なんだ？

　話しを終えるとおっちゃんは、あぁっとゆう間に過ぎ去って行った。私の泊まってる宿を教えたので、きっと今日は一緒の部屋になるだろう。しかしとんでもない体力の持ち主だ。

　そしてついに私もタルチェンに到着。着いた時間は6時過ぎだ。私にしては上出来のタイムだね。

　宿に戻って（やっぱりドイツ人体力オヤジと同室だった）、彼と一緒にメシを食いに行った。久々に食うまっとうなメシ！とてつもなくウマイのだ！

　一夜明けて寒い！やっぱり寒い！早いとこ暖かい場所（寒すぎない場所）まで移動しなきゃ体が持たないよ。松ちゃんからもらった高山病の薬は底をついてしまった。体力も底をついてしまった。しかし松ちゃんの高山病の薬には助かったな。コルラ中にひどいことにならなかったのは、あの薬のおかげだっただろう。

　食堂の兄ちゃんにアリ行きのバスの時間を聞いたが、なんかあんまり当てに出来ない。不定期なのかな？と、ゆうことで、やっぱヒッチハイクだ。村の中でヒッチするよりも道の方に行ってヒッチする方が高確率だろう。

　ほんでね、道っつってもね、道なんか無いのだ。村のはるか向こう側の大平原をトラックやらランクルがビュンビュン走っている。この村は、いわゆる主要交通路のルートからはちょっと外れた場所にある。だからヒッチするなら村から離れてそのメインルートまで歩かなきゃいけない。どのぐらい離れてるだろう？2〜3Kmぐらいかな？

　とゆうことでお昼ごろ、リュックをかついでトボトボ歩いて行った。

　一応このへんだと思うんだけどなぁ、でも全然車が通らないよ。せっかくなのでちょっと散歩しよう。向こうの方まで行けばカイラスが見えるかもしれない。

　私ねぇ、実はじっと同じ所にいてヒッチハイクするのは苦手なんだ。どうしても先の方へ歩いてしまう。歩いたからってどうなるわけでもないんだけどね。あ、トラックが来た！おーい、乗せてくれぇー！って通り過ぎちゃった。トラックの運ちゃんは「ダメダメ」って感じで手を振っていた。

　それ以降も、たまーにだが車が通る。中には停ってくれる車もいたが、乗れるスペースが無かったり方向が違ったりでなかなかヒッチ出来ない。ほんでね、トラックとかは停ってくれることもあるんだけど、ランクルは全然ダメだね。完全に無視だよ。もんのすごいスピードで通り過ぎて行って見向きもしない。「はんっ、君なんか相手にしないもんね」って感じで感じ悪いぞ。

　ヒッチを始めて約3時間後、やっとこさ乗れそうなトラックが停った！荷台にはわんさかとお客さんが乗っている。オレだって乗れるぞ！

　荷台に乗ってる客さんはほとんどチベタンだったが、その中に中国人旅行者がいて、英語が喋れたのだ！ほんで話を聞くと、このトラックはアリじゃなくてツァンダへ行くらしい。

　ツァンダってのは知ってる！ものすごく不思議な景色が見れるグゲ遺跡へ行く拠点の町だ。グゲ遺跡にはぜひ行ってみたかったのだ。いいねいいね、ツァンダへ行こう！アリへ行くよりも好都合だよ！しかもヒッチ代はたったの50元！なんてラッキーなんだ！

　トラック荷台の仲間達。

　後ろや横にもまだまだいっぱいいる。

　揺れます！もんのすごい揺れます！でもチベタンと一緒で気分がいいのだ。みんないい笑顔をしてるのだ。休憩時間で外に出て休んでる時にね、ギターを弾いたのだ。なかなか評判はいいです（多分）。ただね、なぜか、『戦争を知らない子供たち』を歌うと、チベタンのおばちゃん達が大笑いするのだ。ほかの歌は大丈夫なのに、この歌の時だけ笑うのだ。なんでだ？

　揺れて揺られてトラックは門土とゆう所に到着。ここでご飯を食べるのだ。そーいえば行きのバスでもココでメシを食ったな。

　そして、ここで日本人旅行者のグループと出会った。彼らはこれからタルチェンへ行くそうだ。はいはいはい、タルチェン情報教えましたがな。カイラスがよく見える宿のことも教えましたがな。そして、彼らからはグゲ情報をもらった。彼らはタルチェンへ行く前にグゲへ行ったそうだ。こうゆう所で旅行情報を交換できるってのは、なんかいいね。

　ほんでその情報によると、ツァンダへ行く道、とてつもない悪路らしい。彼らはランクルをチャーターして行ったのだが、ランクルですらメチャクチャな揺れ方だったらしい。45度ぐらい傾くのはザラだとか。「あのトラックならもっと大変だと思いますよ。それに時間もすごくかかるんじゃないですか？今日中には着けないかもしれないです」と言っていた。きっとそうだろうな。大丈夫だろうか？

　で、メシ食ってたら例の中国人旅行者が困り顔でやって来た。

「ごめんね、あのトラック、ツァンダへは行かないみたい」

　え？行かないの？

　なんかね、この中国人も勘違いしてたそうなんだ。あのトラックはツァンダじゃなくて、ここからすぐそこの、何とかってゆうお寺のある村までしか行かないそうだ。あれまぁ、そーだよなーどうもヒッチ代が安すぎると思ってたのだ。世の中あんまりうまい話はない。

　とゆうことで、私と中国人旅行者は（二人いる）ココで途中下車することにした。トラックに払ったお金は50元。うん、それでいいでしょう。

　ほんであらためてアリ行きのトラックを探した。ってあぁっとゆう間に見つかった。門土はトラックやバスの休憩場所になってるのでヒッチするのも簡単だ。アリまでの料金は100元。

　ちょっとちょっと高いぞ。タルチェンからは少し離れてるんだからもうちょっと安くしなきゃあ。って値切ろうと思ったら中国人旅行者達、値切るそぶり全く無し。「いいじゃんいいじゃん。早く乗ろうよ」ってさっさと荷台へ行ってしまった。あれまあ、彼らはけっこうお金持ちなのかな？それともこの場所から100元でも相場なのかなぁ？ま、いいか。

　トラックはズンズン進むが、アリに直行するわけではなかった。あっちこっちの場所へ寄って、荷物降ろしたり積み直したりしている。まあ、これが本業なんだから文句は言えないよなー。しかし、アリに着いたのは夜中の1時だった。完全に真っ暗だよ。

　その日は中国人旅行者のお気に入りの宿に連れてってもらった。なんとヒッチポイントの真ん前にある宿だった。宿の人とも旧知の仲らしく、嬉しそうに笑顔で挨拶を交わしていた。

　正直言いまして、彼らのことを完全に信用したわけじゃなかった。宿の人とグルになっているって場合も考えられる。ヒッチから今までの流れが（特に行き先を間違えてたことが）、不自然な感じもしないではない。泊まったのはドミで同じ部屋だが、荷物と貴重品の管理だけは気をつけておこう。

　・・・結果的に、彼らも宿の人もすごく善人であった。彼らは翌朝、どこかの町に出発して行った。宿の人に聞くとね、本当はこの宿、外人を泊めちゃいけないらしいんだ。中国人旅行者の人が無理から頼み込んで泊まれるようにしてくれたらしい。

　うたぐってごめんね。でも、一人旅じゃあ無条件に信用してばっかりでもいけないのだ。この辺のバランス感覚、私はいつまでたってもうまくならない。

　うたぐったバチが当たったのか、体がメチャクチャ痛い。今までの無理がたたったんだろうな。本当はグゲ遺跡にも行きたかったのだが、このままラサに戻ろう。体が持たないよ。

　翌日イミグレーションへ行ってビザの延長をした。許可書があるのでなんの問題もなく1ヶ月延長できた。まだ1週間近くビザが残っててもったいなかったけど、まあ仕方ないや。

　その夜、マッサージをすることにした。バスに乗ったとしても、ラサまでがまた大変だからちょっとでも体調をよくしたかったのだ。マッサージはメイン道路の真ん中にある真っ赤なトレーナーを着たマッサージ譲がいる店に入った。

　ところがあなた、ここのマッサージがすこぶる気持ちよかったのだ！翌朝には体の痛みが完全に取れてたよ。あんまり期待してなかったけど素晴らしいマッサージだった。

　この店、お勧めです！マッサージ譲は何人もいたので全員が全員腕がいいか分からないけど、少なくとも私をマッサージしてくれた子は素晴らしい腕を持っていた。

　いやいやいや、ここまで体が回復したらラサに戻るのもったいないよな。やっぱりグゲへ行くか！そうゆうことでしょう。流れに任せましょう！都合のいいことにヒッチポイントは宿の真ん前だもんね。よし！グゲを目指してヒッチハイクだ！

　しかし、私ったらいつも予定がメチャクチャだな。こんなことならビザ延長はグゲから戻ってからにすればよかったよ。ま、いいか。