予定としてはゴールデンウイーク中ぶっ通しで仕事して、後からのんびり代休を取る計画だ。これなら旅費も安いし、すいているはずだ。
まずはビザ取得のため大使館に電話した。
「ビザは間に合いません。ゴールデンウイーク中はお休みなので、明けてから１０日ぐらいかかりますね」
じょ、じょうだんじゃない。そんなに待てないよ。代休明けには出張仕事も入ってるし。どうしよう、せっかくの休日出勤が無駄になってしまう。
どっかほかの所にしよう。ビザ無しでも行けるところか、２〜３日で取れるところで行きたいところ？
・・・インドになった。
インドは前から行きたかった国だ。しかし、どうも初心者には敷居が高い。もうちょっと修行（？）をつんでから行くところではないんだろうか？ 不安をよそに、チケットがあっさりと取れてしまった。もう行くしかない。
しかし、だいじょうぶだろうか？いつもと違ってろくに下準備もしていない。まるで新人レスラーがろくな準備運動も無しでアントニオ猪木と試合するようなもんだ。アリキック一発でダウンするんじゃないだろうか？
一応、機内でガイドブックを確認。駅前まではプリペイドタクシー（事務所で先に料金を払ってチケットをもらう方式。ボッタクリ等が無くて安心）で１４５ルピー。安いもんだ。（どんぶり勘定で１ルピー４円ぐらい）
空港の外の、暗い道をとぼとぼ歩いて事務所を目指す。案の定、へんな連中が寄ってきた。
「ヘ〜イ日本人。駅前まで100ルピーでいいぜ」
おおっ？100ルピー？45ルピーも安いじゃないか。
「本当に100ルピーだけで行くのか？」
「ノープロブレム。約束するぜ」
よっしゃ。とゆうことで、100ルピーの白タクに乗って出発することになった。
・・・この、たかだか45ルピーとゆうはした金のために、後でえらい目にあうのだが。
「ホテルは決まってるのか？明日からどこに行くんだ？」
ホテルは決まってないが、明日は電車に乗ってバラナシに行くことを話したら。
「そりゃぁビッグプロブレムだ！今、インドは夏休みで宿はみんな満員だぜ。それに明日は日曜日で駅の予約センターも休みだ。よし、俺に任せろ！ナイスなツーリストオフィスを紹介しよう！」
あれよあれよで、怪しいツーリストオフィスに連れていかれてしまった。
オフィスには、さらに怪しいアンちゃんが待ちかまえていた。なぜか運転手と助手席の男も入ってきた。オフィスのアンちゃんいわく。
「今ちょうど旅行シーズンで、なおかつ明日は日曜日だ。安宿はどこも満室だよ。それに電車だって満員だぜ。どうだ俺の口利きで100ドルのホテルに泊まらないか？」
冗談じゃない、100ドルなんかとても出せやしない。
「そんなはずはない、どこか空いてるはずだ。」
「それじゃあ電話してみろよ」と言うことでガイドブックに載ってる安宿を上から順番に電話してみることになった。
「ドゥーユーハブ ア ルーム？」（こ、これでいいと思うんだが。）
「ノー！ナッシング」
シングルもダブルも全部満室だと言う。数軒電話したが全部ダメだ。
「どうだい、全部満員だろうが」
得意満面のアンちゃん。
「よし、こうゆうアイデアはどうだ。デリーからバラナシ行きの電車は満員だが、アーグラからならバラナシ行きのキップは取れる。
そ・こ・で・だ
今晩のホテル。アーグラまでのスペシャルバス。アーグラ観光とホテル。それにバラナシ行きのキップ。ぜーんぶセットで、1,000ドルでどうだ！」
あ、アホかぁ、だれがそんなに出すかい。「ベリーエキスペンシブだ！」
「なんでだよぉ。よし、お前はグットマンだから900ドルにしてやろう」
だから、高いってんだよ。「アイゴートゥ ダイレクトバラナシだ！」
「物わかりの悪いやつだなぁ、アーグラ観光もセットなんだぜ。それとも１００ドルのホテルに泊まってずっとデリーにいるのか？」
「もぉいい！歩いてホテルを探しに行く！」
「お、お前はバカか！ここはインドだぞ、東京と一緒にするんじゃない！こんな真夜中に日本人が一人で歩いてたら一発で殺されるぞ！こないだだって何人か殺されたんだぞ！悪いことは言わん。じゃぁ50ドルのホテルを紹介しよう」
50ドルでも高いんだよぉ。
あーでもない、こーでもない、とやってるうちに、結局50ドルのホテルに泊まることになってしまった。電車は明日直接駅に行ってみることにした。
「だーから駅の予約センターは休みだって言ってるだろぉ。明日の朝ホテルに迎えに行くからなー、待ってろよー」
アンちゃんの言葉は聞かないふりをして出ていった。連れていかれたホテルはけっこうきれいだったが、とても50ドルのホテルにゃ見えなかった。
・・・しかし、インド初日からえらいことになってしまった。
